writer : techinsight

【名盤クロニクル】フランク・ザッパ「オーヴァーナイト・センセーション」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ロック)
フランク・ザッパは多作家である上に、その音楽は概して難解である。
ザッパの音楽は、変則リズム・変拍子や、様々なサウンドコラージュを多用する上に、テキスト(歌詞や語り)の比重が高いものもあり、日本人にとっては言葉の壁やそのテキストの背景になっている政治宗教事情まで理解しなければならない。
これまで、熱心なファンやプロデューサーの様々な創意工夫で色々な方法で売り出しがかけられてきたが、むしろ「入門盤」や「ベストヒッツ編集盤」をもっと活用すべきであろう。そんな意味を込めて「入門盤」に相応しいのが、この「オーヴァーナイトセンセーション」である。

一般にフランク・ザッパを象徴するアルバムとして挙げられるのは、1966年のデビュー作「フリーク・アウト」であるが、ポップさと聴きやすさにおいては、この「オーヴァーナイト・センセーション」のほうに軍配が上がるだろう。

もっとも聴きやすいとはいっても、普通のロックに近いという意味なので、同時代の他のロックに比べればかなりクセの強い曲が並んでいる。

また、おそらくセールス面を考慮したものであろうが、ハードロック色の強いヴォーカリストが起用されており、かなり頑張ってシャウトしている。ただ、それがザッパの音楽と微妙に合っておらず、その辺のぎこちなさも含めて楽しめる。

ザッパの音楽は、フュージョン的に複雑なアンサンブルを聴かせるものや、全編エレクトロニクスで構成されたもの、さらにブラスアンサンブル作品やフルオーケストラ作品がある一方で、ハードコアブルースやファンクな作品がある。

ザッパの音楽を全貌を把握するには、開かれた感性とロック以外の音楽の知識そしてある程度の語学力が必要とされるので、「難解なロック」という立ち位置は変わることはないが、なにしろどんな音楽でもまず聴いてみなければわからないし、音楽を理解するのは感性のみであって、理屈ではない。

そのためにも、まず理屈抜きで聴ける「この1枚」というのを選定しておくべきであろう。どれを選定するかは意見が分かれるところだが、記者は、今回紹介した「オーヴァーナイト・センセーション」とライブ盤「ザッパ・イン・ニューヨーク」を推奨しておきたい。

(収録曲)
1. カマリロ・ブリロ
2. アイム・ザ・スライム
3. ダーティ・ラヴ
4. フィフティー・フィフティー
5. ゾンビー・ウーフ
6. ダイナ・モー・ハム
7. モンタナ
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)