writer : techinsight

【お笑い峰打ちコラム】あえて今、体を張る笑いに注目

 漫才やコントをしっかりと行う芸人に人気が集まる中、もう一つの流れが静かに蠢いている。体を張って見せる、お笑いの原点回帰ともいえるムーブメントだ。

 フジテレビ系で放送されている「オレワン」。芸人たちが様々な種目でのナンバーワン、“オレワン”を決めるバラエティ番組である。

 氷上腹すべりやママチャリ坂上り、熱々もんじゃ早食いなど数々のオリジナル種目に、ガチで挑む芸人たちの姿が馬鹿馬鹿しくもおもしろい。くわえてMCの今田耕司、サバンナ・高橋のトークが華を添え、番組全体としての出来も上々である。

 そして日本テレビ系の「億万笑者!」。S-1バトルと連動した芸人動画を紹介する番組なのだが、不定期に放送されている「芸人ビンタ選手権」がなかなかの仕上がりだ。

 システムはプチドッキリ。仕掛人が何も知らないターゲットをビンタし、そのリアクションを楽しむものである。

 芸人が芸人をビンタする、ただそれだけであるが味わい深い。その時が近づく緊張感、インパクトの瞬間の衝撃、そして漂う独特の空気。ビンタされる側が何も知らないだけで、笑いの質が一つ上がるような気さえする。いろいろな芸人が登場しているが、中でも「グランジ」五明拓弥のビンタはスピード、フォルム、アタック音、どれをとっても素晴らしい。

 私は正直、体を張る系の笑いはあまり好みではない。しかしここに挙げた2つは困惑することなく楽しめる。適度なガチ感と適度なショーアップがかみ合っているからだと思う。

 さて、またもやテレビ番組の収録中に芸人がけがをした。笑いを提供するためならば多少のけがは覚悟の上、という芸人は少なくはないかもしれないし、その心意気は素晴らしいものだと思う。しかし仮に制作サイドが同じようなことを考えていたとしたら言語道断。芸人の体は番組のためにあるのではない。本人と家族、友人、恋人、そして多くのファンのためのものだ。

 笑いのために芸人が体を張るのと、第三者に危険なことを強要されるのはまったく違う。芸人、制作サイドともにそこを履き違えず、楽しい笑いを提供してほしい。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)