writer : techinsight

【3分でわかる】午前3時の無法地帯

 ある程度知られた作品が多かった「このマンガがすごい!」2010年版。そんな中異彩を放っているのが、オンナ編8位にランクインした「午前三時の無法地帯」だ。

 イラストレーターを夢見てデザイン専門学校を卒業した「七瀬ももこ」。とあるデザイン事務所に就職が決まったが、そこはパチンコ専門だった。

 出玉炸裂、新台入替など聞きなれない言葉。煙草の煙で充満するオフィス。給湯室でシャンプーする先輩社員。酒臭い息で怒鳴り散らす営業マン。そして午前3時になっても終わる気配のない仕事。あまりにも理想とかけ離れた現実に、ももこは疲れ果てていた。

 同僚は1ヶ月で辞めてしまい、その後始末でさらに仕事が増えていく。この仕事が終わったら辞めてやる、退職届を携帯しつつ、次々回される仕事に目を回す日々が続いていた。

 過酷な現場で働く女性の仕事と恋を描くヒューマンストーリー。絵柄、台詞回し、コマ割りなどが落ち着いており、非常に洗練された印象だ。

 パチンコ専門デザイン会社という舞台のチョイスがおもしろい。作者のねむようこ氏が過去に働いていた経験が生きており、仕事の描写は非常にリアルなものとなっている。その過酷さだけにスポットを当ててもおもしろい漫画ができあがりそうである。

 しかしこの作品ではそこを掘り下げることはしていない。デザイン業界を知らない人でもおおいに頷ける仕事での躓きや達成感を、軽やかに描いている。

 ももこは普通の女性である。べらぼうに仕事ができたり、あらゆる男性から好意を寄せられたりするわけではない。いたって普通の女性を主人公としたいたって普通の物語だが、この普通加減が絶妙であり、女性読者の心をつかむ。

 爆笑も号泣もないが、読んだ後は心が軽くなる。読者はももこの中に確かにいるもう一人の自分を見つけることで、心地よいカタルシスを得るのだ。

 仕事の酸いも甘いもかみつくしたキャリアウーマンに、夢いっぱいに明るい未来を信じている女子学生に、そして仕事に忙殺される女性を恋人に持つ男性にも、おすすめしたい作品である。

 ちなみにこの作品自体はコミックス3巻で完結。現在は続編にあたる「午前3時の危険地帯」がFEEL YOUNGで連載中だ。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)