writer : techinsight

【3分でわかる】ママはテンパリスト

 「このマンガがすごい!」2010年版オンナ編3位にランクインした「ママはテンパリスト」。月刊コーラスで連載中の、作者である東村アキコ氏の実体験をつづった育児エッセイ漫画である。

 私は、育児漫画が減らないのはハウツー物としての需要があるからだと考えていた。しかしこの作品で東村氏は『育児に関するハウツー的な情報を一切を書かない』と明言している。理由はネットで叩かれるのが嫌だから、とのことだ。

 そう、今はネットがある。知識を仕入れるだけならばわざわざ出版物である漫画を読む必要はどこにもない。それでもこの作品にはわざわざ読む価値がある。

 育児エッセイ漫画というと、どこかほのぼのしていたり、小奇麗にまとまっているものばかりを想像してしまうが、この作品は抱腹絶倒。そんじょそこらのギャグ漫画よりもよほど笑えるものとなっている。

 2歳をすぎても母乳をほしがる息子「ごっちゃん」に断乳させるため、乳房にゴルゴ13の絵を描く。スムーズに寝かしつけるため、迫真の演技で鬼が訪ねてきたように見せかけベッドへ追い込む。東村氏とごっちゃんの毎日は真剣勝負の連続である。

 私には出産、育児の経験はない。それゆえこの作品にはなんの共感もせず、ただただ大爆笑できる。育児とはここまで壮絶で、かつここまで滑稽なものか。子育てはきれいごとだけではできないなどといった聞きかじりの知識を吹き飛ばすほどのインパクトがあるのだ。

 この作品には「すいません 育児ナメてました」というサブタイトルがつけられている。育児未経験の私もこの作品を読むと、本当にそうだとうなずかせられる。

 例えば、コンビニエンスストアやドラッグストアでオムツが売られていないことを私は知らなかった。確かに意識して見たことはないが、ひっそりと陳列されているものだとばかり思っていたのだ。布団に入れるだけでは子供は寝ないというのも新発見。それゆえ東村氏は時に友人を巻き込んでまであれほどの大芝居を打っているのか。

 思い描いていたのとはあまりにも違う育児の現実。この作品でそれを知った私は、衝撃を受けながらも少しだけ足を踏み入れたくなってしまった。

 ちなみに、このマンガがすごい!2010年オンナ版には、同じく東村氏の「海月姫」が4位にランクイン。東村氏は現在、合計4作品の連載を同時進行している名実ともに“すごい!”漫画家である。ごっちゃんとの戦いの合間にこれほどの仕事をこなす様は、育児に悩む人々にとって元気の素となるであろう。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)