writer : techinsight

【名盤クロニクル】趣味の良い変態音楽 ブランドX「マスク」

(画像提供:Amazon.co.jp)
(ジャンル:ロック)

実生活における変態は何かと困ることが多いが、音楽において「変態性」は重要な要素である。
変なフレーズ、クセのある歌い方、変わった歌詞などによって、音楽は味わいを増す。J-POPのアーティストを見ても,椎名林檎、平原綾香、いきものがかりetcは、歌い方やフレーズや歌詞がどこか普通ではない。そこが魅力である。
翻って洋楽ロックの歴史を見れば、変態の歴史であるとも言えるが、70年代後半には整理整頓されていった感がある中、ジャズロックと呼ばれる音楽だけは変態性を保っていた。その代表的な傑作として、今回紹介したいのはブランドXの「マスク」である。

ブランドXは、ロック界の屈指のテクニカルプレイヤーであるジョン・グッドサル(ギター)とパーシー・ジョーンズ(ベース)が中心になって結成されたユニットだ。

便宜上ジャズロックと呼んでいるのは、演奏内容のテクニカルさと即興性に、ジャズとの共通項があるからだが、ここで繰り広げられている演奏はジャズでもロックでもない。あえて命名すれば変態音楽である。

変態といっても難解な音楽ではない。メンバーの個性が絶妙に戦っている様子が面白いのだ。ジョン・グッドサルはロック色の強いギター・ソロを繰り出す一方で、パーシー・ジョーンズは、フレットレスベースで妙ちきりんなフレーズを繰り出して応戦する。

これに、手堅くフュージョン的なキメ技を見せるドラムと、これまた変なフレーズを出すパーカッション。そしてキーボードはいわゆるプログレッシブロック的な空間的な音響をキープ。

それぞれ勝手なことを演奏しながら、「変態さん」と「堅実さん」が競演している様子が、このアルバムの最大の醍醐味である。

奇をてらう変態ではなく、個性の自然な表現としての変態音楽、オープンな心で聴いて欲しい。なお、メンバーは全員高度なテクニシャンである。腕に覚えのあるアマチュアミュージシャンにも親しんで欲しいと思う。

(収録曲)
1. Poke
2. Masques
3. Black Moon
4. Deadly Nightshade
5. Earth Dance
6. Access to Data
7. Ghost of Mayfield Lodge
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)