writer : techinsight

【名盤クロニクル】絵本のような音世界 Zabadak「遠い音楽」

(画像提供:Amazon.co.jp)

Zabadakは、J-POPのメインストリームからはアウトな位置にいる。メロディラインに歌謡曲的なものがほとんどなく、どちらかといえば、アイリッシュフォークやプログレッシブロック、歌手としてはケイト・ブッシュなどの影響下にあるので、必ずしも万人受けするユニットではないが、一度魅力にとりつかれたら、熱狂的なファンになってしまう個性を秘めている。
そのZabadakの入門編ともいうべきアルバムが「遠い音楽」である。

全曲捨て曲のない濃密な内容であり、代表曲となった「遠い音楽」「Harvest Rain(豊穣の雨)の神聖なムード、絵本そのもののような「Around the secret」など名曲揃いである。

そしてこれらの傑作群は、現在は脱退したメインヴォーカルの上野洋子の個性を、ギターの吉良知彦がうまくサポートしていることによる。
そして、音楽全般に言えることだが、バンドメンバー同士で仲が悪かったり、私生活が荒れているほうが、不思議と音楽は面白いものができあがるのである。

Zabadakのオリジナルである二人のユニットメンバーも決して仲が良かったわけではないようで、意見のぶつかり合いが素晴らしい音楽を産んだようである。

現在、Zabadakは吉良知彦のソロプロジェクトとなっており、当初は迷走していたが、脱退した上野洋子はソロアーティストとして活躍しており、吉良知彦のほうも独自の世界を構築し、それぞれ非常に面白い状況となっている。

大変残念なことに、今回紹介した「遠い音楽」は廃盤であり、ヤフオクではプレミアがついている。しかし、普通のJ-POPに飽き足らない音楽ファンにはぜひとも聴いて欲しい傑作である。

(収録曲)
1. 満ち潮の夜
2. 夢を見る方法
3. 遠い音楽
4. 二月の丘
5. 愛は静かな場所へ降りてくる
6. 生まれた街へ
7. サラ
8. アラウンド・ザ・シークレット
9. とぎれとぎれのサイレント・ナイト
10. ハーヴェスト・レイン(豊穣の雨
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)