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【親方日の丸な人々】Google日本語変換で役所のIT経費は節減できるか

お役所のパソコンには、かなりの確立で有料日本語変換エンジンATOKが入っている。文書執筆分量が多いお役所業務において、Windows標準搭載のMS-IMEでは作業効率が下がるからである。官公庁専門用語をパッケージングしたアドオンが提供されているという理由も大きい。
しかし、今般、Googleから無料で使える日本語変換エンジンが提供されたことで、もしかすると端末更新の際にはATOKを導入せずに済むかもしれない。

Google日本語変換の最大の欠点は、誤変換や変換ミスが優先候補として表示されてしまうことだ。ATOKの場合はよくありがちな誤変換は「○○のまちがい」などと指摘した上で補正してくれることを考えれば、一概にどちらが良いかは使い方次第となる。

最初に、国の全官庁に共通と思われる会計用語を変換してみることにする。

まずは「資金前渡官吏」である。意味の説明は省略するが、「しきんぜんとかんり」と読む。ここで「しきんぜんと・・」とまでタイプした時点で「資金前渡」という候補が表示された。ATOKでは「資金前途」になってしまうので、この点は素晴らしい。しかし、「かんり」を「管理」と変換してしまった。正確には「官吏」なのである。

その他「支出官」「物品管理官」「支出負担行為担当官」などはGoogle日本語変換で一発変換できた。

次に、お役所が民間企業に会議の案内などを出す際に使う枕詞を変換してみよう。

(Google日本語変換)
平素より東武の事業に関しては格段のご協力をいただきありがとうございます。
(ATOK)
平素より当部の事業に関しては格段のご協力をいただきありがとうございます

これはATOKに軍配が上がる。東武グループの事業ではないのだ。しかし近年のお役所文章のトレンドである極力ひらがなを使う傾向(「有り難う御座います× ありがとうございます○」など)については、両者とも良くできている。

すでにネットで話題になっているようにGoogle日本語変換が圧巻なのは学術用語や固有名詞だ。

中国の史書である「資治通鑑(しじつがん)」は、「しじつが」までタイプした時点で候補が表示されたし、日本の陽明学者「佐藤一斎(さとういっさい)」も、「さとういっさ」までタイプした時点で候補が表示された。

仮結論として、もし端末更新によりWindows7にバージョンアップするのであれば、Google日本語変換の採用によりATOKは必要なくなるかもしれない。ATOKを採用しなければ、職員5000人の官庁で、およそ4000万円のライセンス経費節減になる。

ただし、極度に専門的なお役所用語や法令名をサクサク変換する必要があるときには、ATOK+お役所用語辞書のセットが有効であろう。職務に応じて採用の可否を決めればよいのである。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)