杜王町での事件が解決してからおよそ半年後、「広瀬康一」はイタリアにいた。「空条承太郎」からとある少年の皮膚の一部を採取してほしいとの依頼を受けてのこと。康一は空港でそうそうに目的の少年に出会うも、荷物をすべて持ち逃げされてしまう。
承太郎に連絡を取り、少年について問いただす康一。すると驚くべきことが承太郎の口から語られた。少年「汐華初流乃(しおばなはるの)」こと「ジョルノ・ジョバァーナ」は、あのディオの息子だというのだ。
ジョルノは母とその結婚相手から虐待を受けて育った。周囲の子供たちからもいじめの標的にされ、孤独な少年時代をすごす。しかし偶然助けた男がギャングだったことから、ジョルノを取り巻く環境が一変。人を信じることをギャングから教わったジョルノは、自らもギャング・スターをめざしていた。
とある事件がきっかけで知り合った「ブローノ・ブチャラティ」の紹介で、組織「パッショーネ」に入団することとなったジョルノ。目的は麻薬を垂れ流す組織を乗っ取り、自らがボスとなって街とそこに住む弱者を守ることである。
イタリアのギャング。いまどき、と思ってしまうほど古い題材ではあるが、荒木飛呂彦氏の手にかかればジョジョワールドに早変わりだ。
物語の展開はハイスピード。スタンドとはなんぞやといった最低限の認識を読者が持っていることを前提とし、これまでには存在しなかった外見、能力のスタンドが次々と登場する。その発想の豊かさには脱帽である。
ひとつの目的に向かって仲間と戦い続けるのは3部以前への回帰とも取れるが、数段スタイリッシュ。主人公・ジョルノを中心としたメインパーティは風貌、能力ともに個性的な男性キャラクターばかりであり、洗練された絵柄も相まってジョジョをこれまで読んでいなかった女性層を取り込む魅力がある。
ジョルノは1部の主人公「ジョナサン・ジョースター」をソフィスティケートしたようなキャラクター。ディオの息子でありながら一族直系であるはずの4部の主人公「東方仗助」よりもよほどジョースター精神を持っており、その信念とカリスマ性で周囲を味方につけていく。しかしこの物語の真の主人公はジョルノではない。組織の幹部でありもっとも身近なジョルノの理解者でもある、ブチャラティだ。
ブチャラティは冷静な判断力、目標に向かう情熱、それらに伴う人望、上に立つ人間として必要なものをすべて備えている。『任務は遂行する 部下も守る 両方やらなくっちゃあならないってのが幹部の辛いところだな』に凝縮される漢の生き様。命を賭して弱者を守り、自らの信じる道を歩み続ける姿は真のヒーローである。
本編のエピローグにあたる「眠れる奴隷」は秀逸。これまでのシリーズにはなかった謎解きがより強く読者の胸にブチャラティの雄姿を刻み込む。これまで十分に発揮されていると思われた荒木氏の才能が、この5部でさらに大きく花開いた。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)