M-1ファイナルの舞台に、ついに彼らがやって来た。「パンクブーブー」、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属の実力派コンビである。
下手の背の高い方がボケの佐藤哲夫。上手の眼鏡がツッコミ、黒瀬純。2人そろっての風貌はどことなくオリエンタルラジオに似ている。結成9年目、2人ともオーバー30の中堅どころ。M-1では過去4回の準決勝進出を経て、ようやくファイナルにたどり着いた。
今大会、私は彼らが本命と踏んでいる。8組中もっともおもしろい、でも、もっとも好き、でもなく、もっとも優勝に近いと思うのだ。
パンブーの漫才は非常にオーソドックスである。オードリーやナイツのようにこれといった特徴があるわけではない。だが王道であることこそが、M-1においては強みになる。
歴代のM-1チャンプは、王道のしゃべくり漫才を披露したコンビが圧倒的に多い。大会史上まれにみる個性派ぞろいだった昨年ですら、もっとも漫才らしい漫才で勝負したNON STYLEがタイトルを奪取している。王道に得点が集まる力のようなものが、M-1ファイナルの舞台には存在するのかもしれない。
王道であることにくわえて必要となるのがキャッチーさ。昨年のノンスタはボケの石田がセルフツッコミを取り入れることでその点をクリアした。パンブーにはそういった飛び道具はない(しいて言えばツカミのローソンネタくらいか)が、不思議と万人受けするのだ。
彼らの漫才には、過不足がない。わかりやすいネタをわかりやすく見せることに長けている。それに一役買っているのが、声の質。佐藤の艶のある声は耳ざわりがよく、滑舌のよさも手伝って、非常に人を惹きつける。声の良し悪しでネタのおもしろさが変わることはないが、漫才が話芸である以上、話し方ひとつで完成度が違ってくるのは当然であろう。抑揚や間の取り方も申し分ない。
さらにいえば、パンブーにはほどよい新星感がある。彼らがタイトルを獲った後、どのようにブレイクしていくかがありありと想像できてしまうのだ。まあ、そういった下世話な意図はこの大会には存在しないと信じているが。
パンブーの出演順は8番目。後には敗者復活組を残すのみの、場が温まりきった時である。本来の力を出しさえすれば、2010年のお笑い界の顔は彼らとなるはずだ。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)