writer : techinsight

【映画行こうよ!】「未来に希望が持てない」マイケル・ムーアがドキュメンタリー辞める悲しきワケ。『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』。

(C)2009 Paramount Vantage, a division of Paramount Pictures Corporation and
Overture Films, LLC

アメリカ社会の問題を常に追及してきたマイケル・ムーア監督。彼が「ドキュメンタリー映画を撮るのは最後になるかもしれない。」と言っている作品が現在公開中の『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』だ。この映画を見れば世界が金融危機に陥った事情を「小学生でも分かる」という触れ込みだが、金融の題材がいままでのムーア監督の映画に比べてちょっとだけムズカシイ。「これで最後になる。」と言われれば残念だけど、ムーアがここまで追求しても何も変わらないアメリカに彼がこの先「希望がもてない。」という気持ちはなんとなく分かった。

日本でも、リストラで住宅ローンが払えず、泣く泣く住宅を売り借金だけが残った。という現象が起きていて、決してサブプライムローンの破綻は他人事ではないのだが、映画中のアメリカのやり方はひどい。「住宅を安く買い叩いて高く売る。」それをやってボロく儲けている企業に資金を提供しているのは・・・・・。

『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002年)では銃社会、『華氏911』(2004年)ではブッシュ大統領、『シッコ』(2007年)では健康保険など、マイケル・ムーアのドキュメンタリー映画には必ずテーマがあり、それに常にぴったりと寄り添っている“隠しテーマ”がある。それは「巨富と貧困」で、今回はその集大成。金融業界と政治の癒着にまで言及している。要するに、格差も健康も戦争も銃も問題の根っこは全部一緒で、「アメリカの腐った原因は私服を肥やす政治家によるアメリカの政治そのものである。」と言っている。これを言った時点で、次につなぐモノが無くなってしまい、「これで最後になる。」そう記者は受け取った。

今回の『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』は、残念ながらかつてスーパーマーケットから銃を撤去させた『ボウリング~』の時の勢いや新鮮さに欠け、ムーアの映画がただのエンターテーメントになった感がある。「夢の国アメリカの“影の部分”」を暴くのにやっきになって来たマイケル・ムーア監督。これだけシビアな内容を実名の政治家(大統領までも)につきつけても、ちゃんと胴体と首がつながっているところを見ると、当事者たちはムーアの映画で槍玉にあげられる事などなんとも思って無いのかもしれない。ムーアがいくら叫ぼうと、貧しいものはより貧しく、富むものは更に肥え太る。残念だがそれはずっと変わらないのだろう。
夢がもてなければ、もうドキュメンタリーを撮る必要も無い。だからやめるのだろう。
虐げられた市民が立ち上がるラストに、少しだけ希望が込められている。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)