日本テレビ+大人計画映画『舞妓Haaaan!!!』と同じ脚本・宮藤官九郎、監督・水田伸生、 主演・阿部サダヲという、いかにも商業的な組み合わせ。さらには、瑛太と竹内結子を盛り、いしだあゆみで締めるという下町人情を装って凄い“儲けの勢い”を感じる映画『なくもんか』。『ごくせん THE MOVIE』で、TBSの『ROOKIES』に完敗した日テレ。今度はテレビドラマ発じゃない喜劇で勝負をかけてきた。公開2週間目過ぎるも、都市部の劇場はまずまずの入り。どうやら同時期公開中の『ゼロの焦点』のテレビ朝日には勝っているようだ。
東京の下町、「善人通り商店街」にある「デリカの山ちゃん」は、毎日行列のできる超人気惣菜店。その店を切り盛りする「二代目山ちゃん」こと祐太(阿部サダヲ)は「究極の八方美人」とよばれるほどの働き者で親切な男。商店街の住人たちは何かと祐太を頼り慕っている。祐太は両親の離婚によって幼い頃から母と別れ、父も行方不明。生き別れの弟がいることを知る。40年間継ぎ足してきた秘伝のソースを受け継ぐ惣菜店のハムカツは、兄弟の絆を結ぶ事ができるのであろうか・・・・・。
阿部サダヲ以下、ノリノリのキャストと宮藤官九郎の放つギャグが弾けまくりの前半は文句ナシに笑える。何もかもしみったれて暗い2009年が終わろうとしているこの時、若者達?は暗くて難しい映画は見ない。だから『ゼロの焦点』でいくらヒロスエが大胆な濡れ場を演じようと、阿部サダヲの三角目(笑顔なんだけど)にはかなう訳ないのだ。なにしろ泣いたり騒いだり、ダジャレをかますといったお約束の阿部が出てきて、もう阿部の顔を見ているだけで可笑しい。これって反則だろう。
しかし、オモシロおかしい前半に比べて、後半は一転勢いが落ちる。ギャグも展開も控えめ。長尺で引っぱった割には「こんなオチでいいのか?」という終わり方をするが、まあその程度の映画だと思って見れば気にならない。
10数年前に家出し、帰ってきた元店主夫婦の一人娘の徹子を演じる竹内結子が、ガチャガチャと庶民的な商店街に舞い降りた鶴の様にキレイでヒロインとして納得。コメディセンスも相変わらずだ。少し痴呆症にかかっている母・安江を演じるいしだあゆみの、正気と恍惚の演じ分けはさすが。彼女が出て無ければ、『なくもんか』は映画じゃなくてただのコントみたいに見える。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)