writer : techinsight

【名盤クロニクル】漢(おとこ)な演奏 小林研一郎「ベルリオーズ幻想」

(画像提供:Amazon.co.jp)
(ジャンル:クラシック)
ベルリオーズの幻想交響曲は、作曲者自身による明確なストーリー設定がある。恋に破れた男が、阿片を飲んで自殺を図り、夢の中で愛する女を殺し、地獄に堕ちて魑魅魍魎の祝宴を見るというものだ。
しかし、この曲の伝統的な演奏スタイルは、なるべくそういう標題性を廃して、純粋な交響曲として演奏しようというものだ。
しかし、近年に至って、実に様々なスタイルの演奏が出てきている。

まず、ストーリー性を重視して、悪魔的な音楽としておどろおどろしく演奏しようというスタイルである。最近の演奏の多くはこのタイプが多い。

もうひとつは、ストーリーには一切関心がなく、曲の構造を重視しようという演奏で、ブーレーズやラトルがこうしたスタイルの演奏を残している。

そして、今回紹介したいのが、日本の誇るマエストロ小林研一郎の演奏だ。これは楽曲の持つ狂気をなるべく押さえ、オーケストラの咆哮を重視して男性美の極致を聴かせようというものだ。

実は、この幻想交響曲は初演当時にはあまりの斬新さに、観客(フランスの貴婦人たち)が耳を押さえて逃げ惑ったという逸話が残っている。小林健一郎の演奏を聴くと、その当時の貴婦人達の動揺が見えるようで、そこがまた面白い。

この曲の作曲から100年後に、同じく大センセーションを巻き起こしたストラヴィンスキーの「春の祭典」にも通じるオーケストラの音色が斬新である。

幻想交響曲には、実に様々なタイプの演奏が残されている。一度曲の魅力にとりつかれたら、存在するCD全部を集めないと気が済まなくなるので、そういう意味でも悪魔的な曲なのである。

(収録曲)
1. 幻想交響曲 作品14 1 夢、情熱
2. 幻想交響曲 作品14 2 舞踏会
3. 幻想交響曲 作品14 3 野の情景
4. 幻想交響曲 作品14 4 断頭台への行進
5. 幻想交響曲 作品14 5 ワルプルギスの夜の夢
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)