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Dreams Come True(以下「ドリカム」)は、J-POPのルーツと言っても良い。現在のJ-POPのカタチを決定づけた偉大なバンドである。
ドリカム以前にはJ-POPはなかったのかといえば、あるにははあったものの、ニューミュージックであったり、歌謡曲であったり、ロックやフォークだったのである。
ドリカム登場の少し前には、松任谷由実が「ニューミュージック界の女帝」「恋愛の教祖様」という地位を独占していた。その松任谷を王座から引きずり下ろしてしまったのが、ドリカムの吉田美和である。
圧倒的な歌唱力と、斬新な心理描写を誇る歌詞により、圧倒的な支持を受けて90年代を駆け抜けたのがドリカムである。
松任谷由実は、90年代に入った頃、インタビューに答えて「”感性だったら”負けない自信があります。」と言っていた、誰を意識しての言葉かは明言していなかったが、吉田美和を意識していたのであろう。相当な脅威を感じていたに違いない。
そんなドリカムの音楽は、大きな変化をすることなく時代とのスタンスの取り方も絶妙に「結晶化」しているので、どれを名盤とするかは個人の好みであろうが、大ヒット曲「嵐が来る」と「LOVE LOVE LOVE」が収録されている「LOVE UNLIMITED∞」を挙げておきたい。
捨て曲なしの素晴らしいアルバムである。
余談であるが、2000年代の特に後半以降のJ-POPがつまらないという声を聞くようになった。
特に歌姫と呼ばれている人たちの曲は「そばにいて」「忘れないよ」「抱いて」「キスして」「ありのままで」といったチープな言葉が目立つようになった。
しかし、それはケータイ文化の普及が背景にある。音楽や酒で仲間意識を持てる時代は過ぎ去り、ケータイがあれば仲間とつながっていられる時代に移行したことの、必然的な変化なのである。
これからのJ-POPは、ケータイでは得られない仲間意識や感動を提供し続けなければならない厳しい時代になっていると言えるが、もしも音楽に向かうハートがあるのなら、J-POPの原点とも言える、ドリカムのアルバムをもう一度聴いてみるのもよいのではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)