10月に第2期がスタートしたNHK「笑神降臨」。29分の放送時間めいっぱい、一組の芸人を満喫できる番組である。
独特のコンセプトにくわえ、出演芸人は1期をふくめて次長課長、インパルス、東京03、サンドウィッチマンなどなど、若手から中堅どころの実力派ばかりをチョイス。彼らのネタを1本10分前後という今のテレビではほとんど見ることができないサイズで楽しめるのがポイントだ。
26日深夜の放送では2丁拳銃(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)が登場。“クイズちょうどええ”などのネタでじわじわと知名度を上げている彼らが披露したのは、なんと25分という長丁場の漫才だった。
舞台には流れるカーペットも、笑いを堪える審査員の姿もない。スーツに身をつつんだ男が2人、センターマイクを挟んで立っているだけだ。
彼らのくり広げる漫才は抱腹絶倒、25分間笑いっぱなし……というものではけっしてなかった。緩急をつけ、時に観客の反応を見、ゆっくりとではあるが非常に質の高い笑いを生み出していく。そして最後には、腹八分目の食後のような、まさに“ちょうどええ”満足感が漂っていた。
ショートネタをつめこんだメガサイズのファーストフードもいいが、たまにはこういう食事も悪くない。ボリュームよりもバランスを重視した、漫才の本質に触れられたような25分間であった。
25分間CMはおろか場面転換の一つもない漫才を見せ続けることは、メディア、芸人双方に相応の覚悟が求められると思う。お金を払って観るライブとは違い、テレビはチャンネルを回せば誰でも見ることができる。逆にいえば、つまらなければすぐに見てもらえなくなるリスクを抱えているのだ。
スポンサーが存在しないNHKと、100分間ぶっ続けで漫才を行う単独ライブ「百式」を定期的に行っている2丁拳銃。この組み合わせにより25分の長尺漫才が地上波に乗って家庭に届けられた。これはお笑い界の現状を思えば、奇跡といっても過言ではないだろう。笑いの神を名乗るだけのことはある、実のある放送であった。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)