writer : techinsight

【3分でわかる】銀魂 後編

 笑いあり涙あり感動ありのSF時代物「銀魂」だが、私にとってはギャグ漫画である。それもただのギャグ漫画ではなく、最低で最高の、どうしようもなくおもしろいがどうしようもない、他に類を見ないギャグ漫画だ。

 2003年の連載当初は作者である空知英秋氏が新人であったからか、それともジャンプという一大メジャー雑誌ゆえか、ギャグは比較的おとなしめ。1話は主人公が鼻血を出しながら正座させられたり、ヒロインが『チンカス』発言する程度に留まっている。作品としても大切なお披露目であるから、これは当然のなりゆきだ。

 萌芽が見られるのはコミックス1巻に収録されている第六訓「お前らテロなんてやってる暇があるならペロの散歩にでも行ってきな」。ちなみに「お前ら~」はサブタイトルであり、これだけでも秘められた何かを十分に感じられるのだが、注目すべきは主人公「坂田銀時」とテロリスト「桂小太郎」との会話。シリアスとギャグを巧みに攪拌する、今となってはおなじみの空知節の原型がここにある。

 独特の台詞回し、ユニークなサブタイトルに続いて際立ってくるのがツッコミ。「志村新八」をはじめとするツッコミストたちの台詞が輝きを増してくるのだ。ボケよりもツッコミを重要視するのは現在のお笑い界にも通じるところがあり、非常に興味深い。

 言葉によるギャグは比較的早期に安定するが、今度は展開が冴えてくる。柳生一族との戦いで見せたまったく戦わない戦いや、アトラスのくだりなどを経て、ドライバー編で完全に開花。圧倒的なくだらなさにむしろ感動してしまった。

 この頃から画的なおもしろさを取り入れることにも積極的になっているように思う。コミックス30巻に収録されている歯医者編は言葉、展開、画、すべてが申し分なしの完成度の高いギャグ作品であった。

 銀魂は漫画だからこそ成り立つギャグに満ちあふれた作品である。そこで気になるのはアニメであるが、アニメはまたアニメで、アニメでしかありえない表現を巧みに利用し、原作との差異はあれど、やはり銀魂として成立させている。これはひとえに制作スタッフのセンスと情熱によるものであろう。

 ところで、銀魂がハリウッドで実写化されるのではという噂はご存知だろうか。個人的には心の底から勘弁してもらいたいものだが、どうせならばドラゴンボールもびっくりの黒歴史を作り上げてほしい。きっと空知氏は、それすらも極上のギャグに変えるだろうから。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)