writer : techinsight

雪国の信号機は縦型、はウソ?~札幌から現地リポート

社会科の教科書で「新潟や北海道など、雪国の自動車用の信号機は積雪対策でタテ型になっている」と習った人も多いだろう。記者自身も、そう思っていた。しかし今夏、札幌にて、そうした常識を覆される光景を目の当たりにした。


 ※写真1(撮影:鈴木亮介・09年8月)

雪国の信号と言えば、縦型。写真1は札幌市中央区の円山公園駅付近で撮影したものだが、自動車用信号機の青・黄・赤が縦に並んでいるのが分かる。縦に並べることで雪の積もる部分を最小限にし、重みで信号機が折れないようにしているのだ。

ところが同じ円山公園駅付近にある別の交差点では(写真2)、信号機が他地域で一般的に見られる型と同様、青・黄・赤が横に並んでいた。

 撮影:鈴木亮介・09年8月
 
 ※写真2(撮影:鈴木亮介・09年8月)

2枚の写真を比較してみると、縦型の信号機は旧来の電灯を使用した信号であるのに対し、横型の信号機は昨今導入が進むLEDタイプの信号機であることがわかる。ひょっとすると、LED化によって北海道の信号機は縦から横に姿を変えているのだろうか。素朴な疑問が生じたので、信号機の管理を行っている北海道警察本部に取材を試みた。

そもそも信号機のLED化は、電気代が安価であること、電球と比べて寿命が7~10倍であることなど環境への負荷を削減できることから、ここ十年で急速に進んでいる。平成17年度末時点では全国平均で12.8%の車両用信号機がLEDタイプに切り替わっており、その後も順次導入が進んでいる。

一方、北海道では着雪により信号灯が見えなくなる恐れがあることから、当初はLED灯の導入が見送られた。その後着雪の問題は解消し、LEDを積極的に導入するという方針に転換されたが、平成17年度末時点での統計によると車両用灯器のLED化率はわずか2.0%で全国最下位となっている。

その土地の広さから、東京に次いで全国で2番目に信号機の設置数が多い北海道。去年から今年にかけて一気にLEDタイプへの切り替えを行ったと見られるが、それと同時に縦型の信号機は姿を消してしまったのだろうか。

 撮影:鈴木亮介(09年8月)
 

北海道警によると、意図的に横型信号機を増やしているという事実はないという。元々横型が設置されていた所には横型を、縦型の所には縦型を導入しているとのことだ。一方、信号機に関する専門家やファンの間では「確かにLEDタイプへの切り替えに際して縦型から横型へ変化した信号機は多い」と指摘する声もあり、道警の発表を鵜呑みにするわけにもいかないようだ。

さらに、興味深いデータも判明した。北海道警によると、平成21年3月末時点での車両用信号灯器およそ1万2千基のうち1675基がLED化されているが、その内訳を見ると縦型が793基であるのに対し、横型はそれを上回る882基あることがわかった。やはり、北海道内のLED化された信号機は横型が主流なのだ。

その理由としては、京三製作所や小糸工業などが制作した薄型の信号機が普及していることが考えられる。従来型に比べて積雪を抑えることができ、雪の重みにも耐えられるので、敢えて縦型にする必要がなくなったのだろう。

 撮影:鈴木亮介・09年8月

雪国の風物詩である縦型信号機…いずれ、その姿を消す日が来るかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)