writer : techinsight

【映画行こうよ!】あくまでも身の丈。シュールでも芸人魂を忘れない松本人志。『しんぼる』

YOSHIMOTO KOGYO CO.,LTD.2009

「松本人志 第二回監督作品」と大きく宣伝されている、まっちゃんの最新作『しんぼる』。品川ヒロシの『ドロップ』といい、木村祐一の『ニセ札』 といい、このところの“吉本芸人監督にハズレなし”は、目の肥えた映画ファンも認める事実である。しかし、今回松本が放つシュールな作品『しんぼる』の“食べにくさ”といったら説明の仕様がないのであるが、黄色のカワイイ・パジャマ姿のまっちゃんは、やっぱりみんなが大好きな「面白い事」を仕掛けてくれた。

メキシコ・プロレス「ルチャリブレ」が行われている町の映像からスタートする『しんぼる』。シネコンなら「入る部屋を間違えたのか?」と焦るほど、洋画調部分の完成度が高い。しばらくして、白い大きな部屋に閉じ込められ、おつまみスナックのCMでおなじみのパジャマを着た(なぜか坊ちゃん刈り)の松本人志が登場。とある装置がきっかけで、パジャマ男のマヌケな脱出劇が展開。最近めでたく結婚し、父になるまっちゃんはそれを予言していたのか、それとも壮大な数の天使は、ダウンタウンを支持する大勢のお客を表現しているのか。謎だけど、面白い。

公開前に、TV番組で松本人志と対談したビートたけしが、1990年のほぼ同時期に公開された自身の第2作『3-4×10月が惨敗だった事を告白。初監督作品が当れば、それだけ2本目の期待が高くなる。『3-4×10月』の作品の出来は決して悪く無いのだが、当事「お茶の間」の人気者だったビートたけしが放つ「残酷で”不快感”をあおる作品」の受け入れは一般的には難しかった。

その点、今回の松本人志の『しんぼる』。は、スタイリッシュなのに、お笑い要素もほど良く組み込まれていて、その辺をすごく考えている。最後までシュールなのに飽きさせない。終盤、ある問題の人物ソックリになった松本が(誰かは劇場でご確認を。)宇宙的な展開を見せてくれるのだが、どんなに崇高とあがめられても、自分は「この程度の男。」といった松本の潔い自己評価が炸裂する。映画監督になっても、ポップコーン片手に座席に座る小学生たちにとっては、ダウンタウンのまっちゃんはまっちゃんなのである。松本人志はそれが良く分かっている。

映画の成功は、映画館でゲラゲラ笑っている彼らが決めるのではないか。
『しんぼる』は、絶賛公開中。

(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)