writer : techinsight

【名盤クロニクル】ジェーン・バーキン「アラベスク」


(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:フレンチポップ)
とかくワンパターンになりがちなフレンチポップの中で、ユニークなアレンジとセンスの良いヴォーカルが印象的な、ジェーン・バーキンの素晴らしいライブアルバムだ。

フレンチポップには縁がなくても、ジェーン・バーキンの名前を知らなくても、エルメスの名品バック「バーキン」の名前は良く知られているだろう。彼女がエルメスにオーダーしたモデルが「バーキン」である。

ところで、フレンチポップ(本国ではヴァリエテフランセと呼ぶらしい)はJ-POPと非常に親和性が高い。

これは歴史的に昭和初期にまで遡るのだが、当時の日本の大衆音楽に最も大きな影響を与えた洋楽は、フレンチポップのルーツである「シャンソン」なのである。

戦後はそれほど影響力を持たなくなったシャンソンの命脈は、そのまま歌謡曲~J-POPへとひそかに引き継がれている。

そのため、J-POPとフレンチポップは多くの共通点がある。どんな音の衣装をまとっても、歌のメロディは伝統的な歌謡曲からそれほど離れていないこと。そして良い意味でも悪い意味でもリズム感がなく、朗々と歌い上げるタイプの楽曲が好まれることなどである。

さて、この「アラベスク」であるが、彼女の前夫であり、フランス音楽界の重鎮だったセルジュ・ゲーンズブールの楽曲を、新解釈で取り上げたアルバムである。
北アフリカのバンドによるアルジェリア風やジプシー風のアレンジがほどこされているのが大変斬新である。
そして、バーキンの歌であるが、かつての過剰なまでの色気を出したエロエロなヴォーカルスタイルは影を潜め、実に味わい深い大人の歌を聴かせてくれる。

歌詞はもちろんフランス語であり、耳になじみが薄いもしれないが、先に書いた斬新なアレンジのおかげで、フレンチポップ特有の「フランス臭」がほとんどない。ワールドミュージックの一種としても聴ける作品集だ。

なお、コンサートのラストに歌われた「さよならを教えて」は、日本でも大ヒットしたフランソワーズ・アルディの持ち歌である。バーキンとアルディは同世代の親友なので、ファンなら思わず感激してしまうところだろう。

(収録曲)

1. エリザ
2. それでも
3. 私のラ・ムール
4. コーヒー・カラー
5. アイ・クローズ・トゥ・ザ・リヴァー
6. 死ぬほど退屈
7. メロディのワルツ
8. 愛のイニシャル
9. いつわりの愛
10. シー・レフト・ホーム (インスト)
11. シック
12. 天国の鍵束
13. 虹の彼方
14. さよならを教えて
15. バビロンの妖精
16. ラ・ジャヴァネーズ
17. エリザ (スタジオ・レコーデッド・ヴァージョン)
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)