writer : techinsight

【名盤クロニクル】スティーブ・ヴァイ「ウルトラゾーン」

(ジャンル:ロック)

変態ギタリストと形容されるスティーブ・ヴァイの1999年発表の傑作である。なぜ「変態」と呼ばれるのか、それは楽器の持つ「制約」を完全無視したとも言える摩訶不思議なフレーズを連続して繰り出す特異な演奏法からである。

エレクトリックギターといっても、ルーツをたどればヨーロッパの特にイベリア半島で使われていた楽器である。当然、そこにはイベリアの民族音楽の影響が存在し、ブルースやジャズ、ロックに使われるようになってからは、特にブルース特有のフレージングや運指の影響が大きい楽器となった。

超絶テクニックと呼ばれるギタリストでも、そうした運指のしやすさに基づいたフレージングを使っていることが多い。

一方、ヴァイのフレージングには、そうしたギターのルーツに反逆するような摩訶不思議なフレージングを次々繰り出すというところが、変態的な快感につながるのである。

彼がデビューすることになった、フランク・ザッパのバンドで彼に与えられたパート名称は「Impossible Guitar Part」。今風に訳せば「ありえねーギター」というところだろう。
彼の音楽は、ロックの分類においては、メタルまたはプログレッシブ・ロックとなっているが、メタルの疾走的な快感と、プログレッシブロック的なトリッキーさを併せ持ったオリジナルな音楽であるともいえる。

1999年発表のこの作品は、デジタルビート、中近東風の女性ヴォイスなどを効果的に使っており、音楽の濃密さにおいても傑出した力作である。なお、ジャケットデザインは御大バンド「イエス」のジャケットデザインで名を馳せたロジャー・ディーンが担当しているのも注目される。

収録曲

1. ザ・ブラッド&ティアーズ
2. ウルトラ・ゾーン
3. Oooo
4. フランク
5. ジブーン
6. ヴードゥー・アシッド
7. ウィンドウズ・トゥ・ザ・ソウル
8. サイレント・ウィズイン
9. アイル・ビー・アラウンド
10. ラッキー・チャームズ
11. フィーヴァー・ドリーム
12. ヒア・アイ・アム
13. エイジアン・スカイ
14. セルフレス・ラヴ
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)