わずか3年前にリリースされた作品を名盤と呼ぶのは多少気が引けるが、2000年代JーPOP界屈指の傑作であるため、今回紹介させていただきたい。
大ヒットしたからという理由ではない。いわゆる捨て曲のない全曲全力投球の濃密な作品だからである。
いきものがかりが素晴らしい理由は、大きく分けて3つあると思われる。
まずヴォーカルの吉岡聖恵が、中学の合唱部出身なため発音が明瞭で歌い方にクセがないことだ。
ご本人も心がけていると思われるが、歌に過剰な感情を込めずに上手に「音楽」を表現する才能が素晴らしい。
そして、彼らのユニークな詩の世界(古語と今風コトバが不思議に混じりあっていて、気負ったメッセージ性がない)が、吉岡のヴォーカルがうまく表現していること。
最後は、今量産されているJ-POPのように「あぁプロがMacで作ったんだろうなぁ」とバレてしまう音楽ではなく、「きっとギターで作曲したんだろうなぁ」と思われる(ミュージシャン本人に確認したわけではないが)親しみやすさがあることだ。
吉岡聖恵は、自身も尊敬していると告白しているAIKOの後継となるべきシンガーだと言えよう。
まだ3人とも20代なので、元気いっぱいの「泣き笑いせつなポップ3人組」で活動できるだろう。
ちょっと気がかりなのは、青春路線のアーティストが30代を迎えたときに、どうやって上手に大人になるかということである。男性アーティストの場合はいくつになっても青春のままで差し支えないのだが、吉岡がどんな変身を遂げるかが楽しみなことの一つである。
外部アーティストを起用して、吉岡のソロを出してみたり、男子二人で別ユニットを組んでみたり、上手にJ-POP界を渡っていって欲しいものである。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)