writer : techinsight

【映画行こうよ!】スカイ・ブルーで彩られた、韓国と日本の裏社会。『ノーボーイズ,ノークライ』

(C) 「The Boat」フィルム・コミッティ

正直、期待していなかったが、見終わった後に“バズーカ砲で撃たれたような”衝撃を受けた。こういう作品は年に1、2本。見ようかどうしようかさんざん悩んで、上映終了ギリギリで見る映画に多い。今をときめく日本の若手俳優・妻夫木聡と、韓国裏社会を扱った問題作『チェイサー』のハ・ジョンウが、今後世界的に活躍が期待されるキム・ヨンナム監督によって命を吹き込まれた『ノーボーイズ,ノークライー泣かない男なんていないー』。荒削りな若者たちが「なぜ生きるのか?」を問い詰めた作品だ。

日本と韓国の俳優が出演し、両国を舞台とした映画は近年の韓流ブームに乗っ取ってわりと多く作られている。しかしそのほとんどがスター俳優を起用した恋愛ものであったり、アクション娯楽作であったりして、なかなか今作『ノーボーイズ,ノークライ』のように韓国人と日本人のリアルな心情を描いたものは少ない。

日本向けの商売で成功した裏社会の“おじさん”に育てられた釜山に住む韓国人、ヒョング(ハ・ジョンウ)。さまざまなモノを違法でボートに積み、山口県の沖合いらしき所に運ぶ。日本では“おじさん”がくれる報酬で女も買え、母に捨てられても、それなりに楽しい人生だと思っている。
ある時、いつものボートに積んだ積荷をひきずり降ろそうとする「髪の長い幽霊」が海から現れ・・・・・。
日本人でありながら、韓国の裏社会の末端で働く不遇の青年・亨(妻夫木聡)と、韓国の大手保険会社の令嬢(チャ・スヨン)とかかわる事になったヒョング。これがきっかけで様々なキケンな目に遭わされ、数奇な運命を辿るのであるが、亨とその「家族」に触れ合う事で、無機質で単調だったそれまでのヒョングが人間らしく変わっていく。

亨を演じた妻夫木聡は、いずれ日本を代表する俳優になるであろう予感。大河ドラマ主演俳優であり、アイドルでありながら、『ブタがいた教室』や『闇の子供たち』など社会派作品にも気負わず出演。その好奇心がこの作品にも大きな影響をもたらしている。時には粗暴で、冷めた生き方をしているが「家族を支える為に」身を費やす、やさしい青年を見事に演じている。ハ・ジョンウ、チャ・スヨンの韓国勢に加え、柄本佑、貫地谷しほりなど、その他の若手の演技も光る。

洋風でオシャレなタイトルに反し、『血と骨』(ビートたけし主演)のような韓国人と日本人のドロドロした人間くささを前面に押し出した作品『ノーボーイズ,ノークライ』。実はハードな作品なのだが、多用される海や、全体を覆うスカイ・ブルーの色調が「見る側の体力の消耗」を押さえてくれる。

『ノーボーイズ,ノークライー泣かない男なんていないー』は絶賛公開中。

(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)