writer : techinsight

【3分でわかる】からくりサーカス 中編

 誘拐事件から2ヶ月。亡き父から莫大な遺産を受け継いだ「才賀勝」は平穏な日常に戻っていた。勝の乳母の娘である「しろがね」は勝が通う小学校の近くの高校に籍を置き、勝を守るべく日々備えている。

 勝を狙う輩はいまだ消えておらず、再び誘拐事件が起こった。たまたま居合わせたクラスメイトを巻き込んだことに心を痛めた勝は学校を去り、家を出る決意をする。勝はしろがねとともに誘拐事件の時に手助けしてくれた「仲町」のもとへ身を寄せ、サーカス団の一員として旅を始めた。

 舞台は移ってフランス。記憶をなくした男が失われた時間を取り戻すためにジャグリングの練習をしている。ふとしたきっかけで男が記憶を取り戻したかけた時、自らの意志で動く「自動人形(オートマータ)」が現れた。

 男が取り乱す傍らで、自らを人形破壊者と名乗る医師「ギイ・クリストフ・レッシュ」が人形「オリンピア」を繰り出しオートマータを撃破。ギイの導きによって男はオートマータ、人形破壊者、そしてかつて患っていた病“ゾナハ病”の真実に迫っていく。

 ゾナハ病をふりまき跋扈するオートマータたち“真夜中のサーカス”を壊滅させるべく、男とギイ、そして最古の人形破壊者「ルシール」は旅立つ。各地を点々とするうち、一向は運命に導かれるように日本へ――。

 勝らの日常を描く“サーカス”編とルシールたちの戦いを綴る“からくり”編が行き来するコミックス4~29巻。真夜中のサーカスとの対決のさなか、幕間劇のごとく仲町サーカスの日々が挿入される。このザッピングのナビゲーターとして登場するのが、サーカスには欠かせない道化である。

 おどけた口上でストーリーを説明する道化は、サーカス編にもからくり編にも干渉しない。だからこそ緩急の差が大きい2つの物語を違和感なくつなぐ緩衝材の役割としてはうってつけである。道化の登場で読者は一度現実に戻され、再び物語の中に入り込む余裕を与えられるのだ。そして読者がその存在の真意を知るのは、もう少し先のことである。

 真夜中のサーカスとの戦いは男の活躍で幕を引くが、それは次の戦いの呼び水であった。時を同じくして勝には残酷な現実が突きつけられる。自身としろがねの深すぎる因縁を知った勝は、彼女を守るために立ち上がった。そしてようやく、物語は本編へ突入する。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)