iPhoneで電子書籍が読めるサービス「iPhone/iPod touch読書サービス」において今年の8月、もっとも読まれた作品は漫画「からくりサーカス」であったという。ハードは変われどあれほどの名作がより多くの人に知られるのは嬉しい限りだ。
『サーカスに、連れていってくれませんか…』――人を笑わせないと死ぬ病にかかっている「加藤鳴海」の前に、自身の体よりも大きなスーツケースを携える少年「才賀勝」が現れた。
勝は莫大な資産を持つ父が亡くなったことでその身を狙われるようになり、守り人となるはずの「しろがね」を探していた。サーカスにいけばしろがねに会えると聞き、鳴海は自身がアルバイトをしているサーカスまで勝を送り届けることに。そこに現れた追っ手はなんと人形だった。
人間以上の力を持つ人形の攻撃に武術の心得のある鳴海も苦戦。追い詰められた勝のもとに銀髪の美女が現れた。彼女こそがしろがね、勝の乳母の娘であり、「あるるかん」を操り戦う人形使いである。
しろがねとあるるかんの力で一時は敵を退けたものの、次から次へと勝を狙う人形使いが現れる。その猛攻を耐え切れず、ついに勝が連れ去られてしまった。
鳴海としろがねはすぐに救出へ向かう。待ち構えていた人形使いをやはり人形でなぎ倒すしろがねを見、鳴海の心に疑念がともった。『こいつらは何なんだよ…』、その問いに敵であるはずの人形使い「阿紫花英良」が口を開く。才賀家と日本の人形使い一族「黒賀の者」との古の関係が明らかにされようとしていた。
一方、勝はこの誘拐劇が自分を養子にすることでその財産を管理しようともくろむ叔父によるものと気づいた。叔父の手から逃れるため地下室に逃げ込んだ勝は、“人形⑭”と題されたファイルを見つける。それにはなぜか勝としろがねの名が記されており、『勝はエサである』との記述が。自身の出生の秘密を知った勝の顔つきが変わった。
人形使いを退けた鳴海としろがねは屋敷に入り、勝を探す。その道中、しろがねの口から自らの過去が語られた。フランスの田舎町でただひたすらに、生まれながらの人形使い、人形を操る人形として育てられた幼少期。対話と戦いを通して少しずつ心を通わせる鳴海としろがねだが、敵の姦計にはまり捕らえられてしまった。
阿紫花を味方につけた勝はそれを知り激走。『今度はぼくが助ける番だ!』、闘う意志をはじめて持った勝が繰り糸を手にする。
大財閥の愛人の子として生まれ、同情すべき日常を送りそれに甘んじていた少年が立ち上がるまでのプロセス。そしてそれは少年にとって非常に残酷な終焉を迎えた。紹介した“勝”編はコミックス1~3巻まで描かている、長い長い物語のほんの序章である。
しかしながらすべての回が見所であり、できるだけネタバレを避け、かつおもしろさを伝えることに骨が折れた。漫画をテキストで紹介することの難しさを感じつつ、中編へ。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)