2008年5月、銃撃事件の容疑者3人が車で逃走し、警察が追跡、逮捕する事件があった。この逮捕劇をFox29 News Philadelphiaが撮影した約14分のビデオには18人の警官に袋だたきにされる容疑者三人の姿があった。ビデオはYoutubeなどネット上でも話題になり、事件の結末に注目が集まっていた。
8月6日大陪審による事件の判断が下され、事件に関与した18人の警官は訓練のガイドラインに沿った正当行為を行い、警官に不適切な行動または判断がなかったとしている。この事件からは一人も刑事起訴はされない。公開された大陪審のレポートでは“我々陪審員は事件当時警官によって適用された行動は有益であり、有害ではない。つまり蹴り、殴打は傷害を与えるものではなく、迅速かつ安全な逮捕を促進させる為であったと判断した。”と警官側の正当性を明確にしている。
ビデオに残されたあまりにも衝撃的なシーンに怒りの声が上がっていた。Fox29Newsの街頭インタビューでは黒人の容疑者という点に注目し、「肌の色がなんであろうと、人を殴る、蹴るのは間違いだ。そんな奴らは処分されるべきだ。」と話す市民もいた。フィラデルフィア警察署長チャールズ ラムジーは「40年の経験からして、何が起こったのかはわかってるつもりだ。私の意見としては、すべての行動が正当であると認められるわけではない。」とコメントを残している。18人のうち4人は解雇され、8人は降格処分を受けた。
事件が起こる2日前にフィラデルフィア警察署勤務の警察官が強盗犯人を追跡中に容疑者に射殺される事件があったばかりで、今回の事件当時は逃走中の犯人を捜索するいつも以上に厳しいパトロールが行われおり、街中が緊迫したムードだった。暴行を受けた3人の容疑者は強盗、警官射殺事件とは全く関係はなく、別の銃撃事件で逮捕されている。
同僚の死に過剰反応したのではないかという見解もあり、また銃器を持っていたと見られる容疑者を逮捕するには正当な行動だったという見解もある。1年以上経った今も14分のビデオに映し出される事実の衝撃は市民の心を揺るがしている。
(TechinsightJapan編集部 村居唯衣)