“新型インフルエンザ” の急激な広まりに、もういつ感染してもおかしくないと緊張を走らせる私たちであるが、中国では、大変致死率が高いことで知られる、あの恐ろしいペスト菌を原因とする肺ペストが発生しているようだ。
中国で今、9人の新しい患者が、すでに3名の死者を出している極めて重い肺炎症状と闘っている。この亡くなった3名は、なんと発病から24時間以内に死亡しており、中国政府と保健当局は最大限の注意を呼び掛けている。
現在のところこの肺ペストは、中国青海省西寧(Xining)市の人口1万人の村、チベット自治区興海(Ziketan)にて集中して発生しており、7月30日に32歳と37歳の男性が、そして8月3日に64歳の男性が死亡している。
9名の患者は現在隔離されており、新たな発生は認められていない。保健当局から派遣された職員らが、地区全体を消毒して回っているが、患者らと接点を持っていたとされる人々も追跡調査の対象として監視下にある。
また現在この地区および付近一帯は、周辺地区との遮断を決めた。80%の店舗が休業になっているものの、適切な食糧や生活物資の供給を続けているため、今のところ生活面に混乱は生じていないが、消毒関連商品と野菜の値段が急騰しているという。
当局は外出時にはマスクを着用するよう人々に言い渡した他、7月中旬以降に興海あるいはその付近に最近滞在したことのある人で、熱や咳といった症状が出ている人は、すぐに医療機関にて診察してもらうよう呼びかけている。
WHO(世界保健機関)はこの肺感染症について、中国支部広報担当のヴィヴィアン・タンさんの連絡から、かつてヨーロッパ人の3割を死に追いやった恐ろしい感染症「ペスト」を引き起こす、グラム陰性の通性嫌気性細菌と同じものと見ている。ペストは、ペスト菌に感染したネズミ、あるいはその血を吸ったノミに刺されることで傷口から感染する病気である。
大変珍しい発病パターンではあるが、今回はそのペスト菌に感染した人の体内で肺に菌が至り、その咳や痰によって他の人にも感染したと考えられるとし、24時間以内に死に至らしめる症状悪化の急激さや、咳から容易に感染することから、極めて性質の悪い疫病であるという。
実は2001年と2004年の二度、ペストの発生を見ている中国であるが、そのうち2004年はやはり青海省で発生しており、8名が突然の発症とともに死亡していた。後の調べで、彼らの多くが、中国北西部あるいはモンゴル地区に生息する、野生のマーモットや小動物を殺して食べたりした後に発症したことが分かっている。
これまでのこうした疫病はアフリカで発生しているという説が、徐々に崩れて来ているのも事実であるが、中国政府および保健当局は、今回の発生も大ブレークには至らせまいと懸命になっている。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)