writer : techinsight

【アリ?ナシ?】また買うの?エコ替え、エコポイントにみる矛盾

政府のエコポイント制度が導入から1ヶ月を迎えた。省エネ家電への買い替え、いわゆる「エコ替え」に対する意識の高まりや、テレビの地デジ対策との連動などとも相まって、早くも申請件数が50万件を突破したという。
環境問題への関心を高めるとともに、経済対策にもなっていると評判のこの制度だが、現金還元や割引ではなく、商品券等との交換であるポイント制であることには、ある矛盾が孕んでいる。

エコポイントとは、今年5月に政府が導入した制度で、いわゆる「エコ家電」の購入者を対象に、購入金額に応じた一定のポイントを付与するというものだ。ポイントは商品券や公共交通機関の乗車券などへの交換や、地域経済の活性化につながる地域産品への交換、さらには地球にやさしい環境配慮型製品への交換が可能となっている。

交換に際しては、エコポイント対象の家電製品を購入した時の領収書と、家電製品の保証書、そしてリサイクル券の3書類が必要となり、申請方法などの詳細はエコポイント事務局の公式サイトに掲載されている。

さてこのエコポイントという制度だが、不景気で日用品や生活必需品さえも買い控えを迫られている消費者にとって、有難い制度であることは言うまでもない。しかしながら、追及したいのは、それが「現金還元」や「購入時の割引」ではなく、「ポイント制」である点だ。

ポイントが付与されるということは、そのポイントを何かに交換するか、それを使ってまた新たな商品を購入しなければならないということである。

モノが売れないことが景気の減速をいっそう押し進めるということは、小学生でもわかる経済の基本原理だ。しかし、「エコ」を全面化し、無駄をなくすことで環境破壊を食い止めようとする制度であることを謳いながら、新たな消費を「ポイント」という形で半強制するこの制度には大きな矛盾があるのではないか。

実際に、エコポイントの交換商品の中で人気となっているのは、日用品の購入も可能な商品券や、交通系の電子マネーだという。これは、少しでも生活必需品の購入に充てたいという消費者の意欲の表れではないか。即ち裏を返せば、そのポイントを利用して新たな商品を購入したいとまでは思っていないということだ。

さらに、昨今流行りの「エコ替え」という宣伝文句にも疑問を呈したい。この言葉でくくられることで、それが当然であるかのような印象を与えられる。確かに、旧式の冷蔵庫や自動車、照明器具を使い続けることは、科学的には地球に優しくないのかもしれない。しかし、まだ使えるものを「エコ替え」してしまうことに倫理的な罪悪感を覚えるのは記者だけだろうか。「もったいない」に注目したワンガリ・マータイ氏がこの日本の現状をどう見るか、聞いてみたいところだ。

結局、政府レベルの環境対策は未だ「経済か、環境か」の二者択一段階にとどまっている現状が、この「エコポイント」という制度によって浮き彫りになったと言えよう。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)