writer : techinsight

【お笑い峰打ちコラム】イケメン芸人から気の毒芸人へ 狩野英孝の流浪

 ラーメン、つけ麺、僕イケメン。もはや懐かしさすら漂うフレーズであるが、その発信源である狩野英孝(マセキ芸能社)はいまだ健在である。

 およそ2年前、目にも眩しい真っ白なスーツでお笑い界に舞い降りた狩野。イケメンネタで人気を得るものの、本人以外はすぐに気づいた。狩野がさほどイケメンではないことに。そして狩野にはその勘違いをいじられるポジションが与えられた。

 まもなく狩野はドッキリスターとしての才能を萌芽させる。生来の素直な性格ゆえか仕掛けられたドッキリにことごとく引っかかり、その見事なまでの騙されぶりはさらなるドッキリを呼んだ。大小さまざまなドッキリがうずまくドッキリスパイラルに飲み込まれ、ネタにも変化が生まれる。

 イケメンキャラから一転、気の毒キャラへ。ネタの中で狩野は忘れられる、無視されるなどの冷遇に甘んじるようになり、その変貌は周囲にも受け入れられた。一発屋、からみづらいなどど言われながらも芸人として生きながらえてきた狩野に、新たな道が開けた。

 ところがここに来ての冠番組の打ち切り。しかもそれはつまらない、数字が取れないといった理由ではなく、共演者の不始末でだ。なんという気の毒ぶりであろうか。気の毒キャラを演じているうちに、本当に気の毒神に魅入られてしまったのか。

 不幸を売りにしている芸人は数多い。しかし、ここまで憐憫の情がかき立てられる芸人を私は他に知らない。気の毒で飯を食う気の毒芸人。新しいがせつなすぎるジャンルである。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)