writer : techinsight

【お笑い峰打ちコラム】イロモネアに見る番宣の進化

 過剰な番宣が物議をかもし出しているTBS。拙コラムでもたびたび触れてきたが、もはやここまでくれば天晴れという域にまで到達している。

 お笑い番組におけるドラマ等の番宣について、私個人は必ずしも否定派ではない。好きなお笑い番組で新ドラマ等の情報をも得られるのはありがたいとすら思う。要は、番宣のせいで番組自体がつまらなくなりさえしなければいいのだ。

 お笑い番組と番宣ががっぷり四つの体を見せているのが「ザ・イロモネア」である。不定期に行われる「ゴールドラッシュ~イロモネアへの道~」では、TBSがプッシュしたいドラマに出演している俳優が審査員として居並ぶのが常。しかしこのこと自体は番組になんら悪影響を与えるものではない。俳優たちはただ若手芸人のネタを見ているだけなのだから。

 それでもこのコーナーがいまひとつ精彩を欠いているように感じるのは、どこかで見たような芸人のどこかで見たようなネタがどこかで見たような舞台装置で展開されているからであろう。番宣の雄たるTBSは、それにより番組をつまらなくするなどの愚は冒さない。

 さらに7月23日の放送では実験的な試みを行っていた。芸人が一人でさまざまなシチュエーションに対応し、笑いを取ることを課せられる「ザ・ピンモネア」において、通常出演しているエキストラを新ドラマに出演している俳優たちにすり替えたのだ。

 “ピンモネア劇団員”と呼ばれるエキストラは、芸人がからんできてもリアクションを見せることは禁じられている。彼らはあくまで生徒Aや会社員Bに徹しなければならない真のエキストラ、いわば動く書割だ。そんな役割を美少年アイドルや大物女優に与えるTBSの心意気。番宣のためにここまでする徹底ぶりは見事というほかない。

 この試みはドラマ好きには好評を博しそうである。特に特定の俳優のファンであるならば、普段は絶対に見られないエキストラという特殊性と、シチュエーションに合わせたさまざまな役どころが短時間で楽しめることにお得感を感じるはずだ。

 反面、お笑いの観点からすれば、著名な俳優をエキストラとして登場させることで笑いのバリエーションは広がると同時にハードルが下がる懸念がある。実際に先日の放送で幾度か見られた俳優いじりを、安直だと嫌うお笑い好きは少なからずいるであろう。

 番宣のために有名俳優をエキストラとしてコントに参加させる発想は新しい。しかし、それにより本来の番組のファンがところてんのごとく押し出されはしないか。そうならないことを願うばかりだ。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)