臓器移植はドナーを集めることも重要ではあるが、一番の問題は患者とドナーのマッチングに成功するかである。何百人というドナーの中にそれぞれの患者に似合ったドナーがいなければ、移植手術を行うこともできない。時には病に伏す家族の一員を助ける為に臓器提供を決断したが、マッチングが成立せず涙を飲む家族もある。ある日腎臓を提供したいと行って来た一人の男がいた。その男の決断からマッチングが連鎖し、後に4都市での8つの腎臓移植手術に繋がっていった。
マッチングの連鎖はトーマス クノッツから始まった。クノッツがメリーランド州バルティモアのJohns Hopkins Hospitalに移植が必要な人の為に腎臓を提供したいと言って来た。病院側の調べにより一人の患者にマッチングする事が判明し、移植手術が決定した。患者には実は腎臓を提供したかったがマッチングが成立せずに断念した家族がいた。患者に臓器提供者が見つかったことから、その家族が他に移植が必要な患者の為に臓器提供したいと病院側に告げた。病院側が調べると、今度もまた臓器提供したかったがマッチングしなかった家族がいた患者とマッチングすることがわかったのだ。
この予測しなかった連鎖が次々に発生していき、バルティモア、セントルイス、オクラホマ、デトロイトの4都市で計8つの腎臓移植手術が成功していった。Johns Hopkins Hospital 総合移植センターの責任者であり、今回の移植の調整担当をしたロバート モンゴメリーは「従来生体ドナーの腎臓移植はドナーと患者が同じ病院内で同時に手術を受け、取り出された腎臓がすぐに移植されるものだった。今は摘出後腎臓は8時間までなら影響はないということが判明した。」と話している。今回の8つの移植手術では摘出された腎臓はチャーター機や民間航空機で病院間を輸送された。
モンゴメリーによれば手術はすべて成功し、患者の体調も良好だ。病院間を繋げるデータベースと医師らの根気があってこそ今回の大移植プロジェクトが成功したのだ。
(TechinsightJapan編集部 村居唯衣)