いまやバラエティ番組になくてはならない存在となった土田晃之(太田プロダクション)。芸らしい芸を持たないままある種の高みに上りつめた、希少なお笑い芸人である。
土田の魅力の一つはレスポンスのよさ。誰のどんな発言にも及第点のコメントをし続ける能力は稀に見るものだ。まさに打てば響くという表現がふさわしく、それでいてコメントすべてが大爆笑とまではいかなくとも常に的を射ている。これこそが彼をバラエティ番組のキーパーソンにまで押し上げた要素である。
しかし土田はただの安打量産マシンではない。その気になればホームランを打つ力もしっかりと持っている。ここが巷にあふれる万年ひな壇ウォーマーとは違うところだ。
土田にとってのホームランはガンダムであり、家電である。ガンダム芸人としてはテルユキ・ツチダ大尉として専用モビルスーツがデザインされるほどの権威。日本テレビ系で放送されている「浜ちゃんが!」では、ツチダ大尉としてペラ紙に殴り書いた「ガンダム00」DVDボックスの推薦文に、当のDVDよりも高値がつけられた。
アイシェアが行った影響力のある芸能人の意識調査では、“家電を紹介されたら欲しくなる芸能人”で土田が1位に選ばれている。家電芸人としての活躍の場は、発祥の「アメトーーク!」だけにとどまらず、さまざまなメディアにまで広がりを見せている。
お笑い芸人のみならず、芸能人が特定の分野への傾倒ぶりを披露する機会は増えてきた。増殖する第二、第三の○○芸人の追随を許さないのは、土田本来のトークの力ゆえに他ならない。
その分野に興味のない人間にとっては、正直、マニアはうっとおしいものである。意味不明な単語をちりばめた熱のあるトークは右から左へと抜けていくだけのものでしかない。しかし土田のトークは心に残る。難解な事物をわかりやすくかみ砕いて大勢の人におもしろさを伝える術に長けているのだ。
他にもサッカー好きや子沢山といった面もあるが、それ以上に土田を語る上で欠かせないのが「ペナルティ」ワッキー(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)の存在。主にアメトーークなどでの土田のワッキーへの冷淡さは一見の価値がある。普段は温厚で博識なコメンテーター然としている土田が芸人の顔に戻る瞬間だ。
基本がしっかりしていること。誰にも負けない分野があること。本分を忘れないこと。これらが土田の成功の秘訣のように思われる。そしてもっとも重要なのは、自分の持っている力を出すべき時、そうでない時を見極めていることであろう。誰にでもできることではないが、社会人ならぜひとも見習いたいものである。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)