writer : techinsight

【ドラマの女王】ヒットが悲しい。みもフタもないストーリー。『怨み屋本舗 REBOOT』 

今回の【ドラマの女王】は『怨み屋本舗 REBOOT』(木下あゆ美主演 テレビ東京系)。“ぜんぜん知らない”キレイなお姉さんが何人も出てきて、おどろおどろしい復讐とその前の嫌な出来事を延々とお届けする、記者の大嫌いなタイプの陰湿ドラマ。どんなに嫌かと思ってみて見たら何とビックリ、前クールの人気作『湯けむりスナイパー』を越える興味深いドラマだった。各回のゲストもいい味を出している。

第1、2回の、学校裏サイトのいじめにより自殺した少女の母(古村比呂)から「仕事」を依頼された怨み屋(木下あゆ美)は、裏サイトを運営する“オニの部長”である担任教師を生徒に追い詰めさせて自殺させ、死んだ娘をいじめた少女・チサト→メチャイケ大久保似(守山玲愛)を含む3人の同級生の少女を闇の組織に“性の奴隷”として売っ払う。

学校裏サイトをつかった実態のわからない“オニの部長”の支持を受け、ゲーム感覚で友達を追い詰める子どもたちの姿がリアル。頭から血を流し倒れる教師を見て校長が、「これで(自分の人生が)終わりだ。」と言ったり、けっこうありえるシチュエーションが続く。非現実的なドラマながら現代日本の“暗部”をうまく突いている。

しかし、少女たちのイジメの実態が売春強要だったり、娘の死に心を痛めた母親が一転、殺人の加害者になったりと、もう、みもフタもないストーリー展開は見ていて不快。怨みや憎悪を金でなんとかしようという依頼者の先走った心につけこみ、悪人とはいえさらに酷い仕打ちを犯せば、さらなる怨念を生みかねない。怨み→金払って→お仕置きの構図は『必殺仕事人』も一緒なんだけど、なんの救いも描かれないので“後味の悪さ”は格別だ。まあ、そこがリアルと言えばリアルなんだが。

一人だけマトモな報道記者・星影静香(長谷部瞳)の存在が唯一の救い。その上司役の田中哲司 となぜか重要な役で出ている加藤雅也、ゲストの古村比呂、キモイ教師役の正名僕蔵など、脇キャストやゲストもバツグンな演技でドラマを盛り上げる。もちろん、「特捜戦隊デカレンジャー」、木下あゆみも頑張っている。

「表現の自由」、「視聴率」、「社会的影響」、さまざまな事を考えさせられる『怨み屋本舗 REBOOT』。達者な役者たちと、上手い演出で短時間・低予算ながらドラマとしては上出来だが、この作品が連続ヒットする現代はとても悲しい。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)