漏えいではないが、道義的に問題はないのか。インターネット上のショッピングサイト「楽天市場」を運営する楽天株式会社が、顧客のクレジットカード番号やメールアドレスなどの個人情報を一部の出店企業に提供していたことが明らかになった。さらに、この件を報道した読売新聞に対して楽天は「事実誤認」と指摘したうえで、取材した記者を公式サイト上で名指しで批判するなど、異例とも言える釈明を行っている。
そもそも楽天は2005年、顧客情報の流出事件を受けて、クレジットカード番号などの個人情報は店舗側に非開示とする方針を明らかにしていた。しかしその一方で、上新電機など大手9社の企業に対して、例外的にクレジット番号などの個人情報を提供していたという。さらに、その際手数料として1件あたり10円を企業から徴収していたという。
これを一部メディアが「1件10円で個人情報を販売」と報じたため、あたかも個人情報の売買が公然と行われているかのような印象を利用者に与えてしまった、というのが今回の事件の概要だ。
しかし、報じ方こそミスリーディングと指摘されても致し方ないものの、楽天が個人情報を開示しないと言いながら一部企業に例外的に開示していたのは事実であり、この点をしっかりと消費者に伝えなかった点で、楽天にも落ち度があると言えよう。
また、因果関係は解明されていないものの、「楽天用に作ったアドレスに迷惑メールが届いた」など、個人情報の流出、不正使用を指摘する声も挙がっており、個人情報の流出を一度起こしてしまった楽天としては、詰めの甘い対応だったと言えよう。
ところが楽天は、自身の落ち度を認めるどころか、この件を最初に報じたネットメディア「GIGAZINE」に対しては「全くの事実誤認」とお茶を濁すコメントにとどまり、その後本件を報じた読売新聞に対しては「あたかも楽天が顧客情報を有料で販売しているかのような見出しをつけ、消費者の不安を煽るようなミスリーディングな記事を掲載されたことはまことに遺憾」と、取材にあたった東京本社社会部の記者を名指しで批判した。
楽天のこうした居直りともとれる批判コメントは、今後様々な議論を呼びそうだ。少なくともこれが楽天利用客への信頼回復につながるか、と考えた場合、明らかに自分で自分の首を絞めていると言えよう。
なお、個人情報の提供を受けていた上新電機は「弊社は、楽天市場Joshin web店での決済及び、配送業務を円滑に行うために必要な情報の提供を楽天より受けている。個人情報については上記目的以外に使用することはなく、個人情報の管理には厳正を期している」とのコメントを発表している。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)