writer : techinsight

舞台で見事花開いた神田沙也加『夏の夜の夢』

東京オペラシティに隣接する新国立劇場(京王線初台駅)で現在上演中の舞台、『夏の夜の夢』。 シェイクスピア夏の代表作にてお馴染み、ロマンチックな口上やセリフが満載の恋愛劇。原作に忠実な今作は、さらに若手ダンサー達による躍動的な妖精のダンスや、ベテラン俳優によるユーモラスな職人たちの演技が男女の恋を盛り上げパワーアップ。そして神秘的な森の妖精たちの中に、ひときわ大きく輝いている「あの人」がいる。

長いセリフが多いシェイクスピア劇の愉しみ方については、前回の記事で触れているが、『夏の夜の夢』の森の主役・妖精たちは実にユニークなキャストで占められている。圧倒的な存在感を見せるパック役のチョウソンハをはじめ、山海塾の浅井信好やストリートダンス出身の西田健二、森川次朗、柴一平などおよそ妖精らしからぬタイプのダンサーが魑魅魍魎感を出している。そしてジャズダンサーのJuNGLE、 宝塚出身の倉田亜味、 元Noismメンバーの清家悠圭といった舞台経験の長い安定したダンサーや役者たち。そして彼らに引けをとらずに頑張っているのが神田沙也加だ。

キラキラ輝くく大きな瞳と、持ち前のするどい感覚による機敏な動きを見せる神田は「豆の花」という女王のサポート役の妖精ながら、他を圧倒する華やかさ。村井や麻実など日本を代表する舞台役者や、才能溢れる若いキャスト、一流のスタッフによる今回の舞台で、神田は舞台女優としての実力を一歩一歩確実に身につけている。今後の出演作、『レ・ミゼラブル』も実に楽しみだ。自身の写真満載のオフィシャルブログでは、ほぼ毎日舞台に立つ22歳の神田沙也加の日常が綴られる。

この他に、若者たちの恋愛のドタバタをコミカルに演じる小山萌子、宮菜穂子、細見大輔、 石母田史朗のセリフ回しの素晴らしさや、御茶ノ水博士みたいな青山達三のクウィンスが引き連れる職人たちのデコボコ劇、精巧なつくりのしゃべるロバが実に面白い。また、インドの子ども役の小島幸士くんや、小山颯くんのカワイさにも注目。とても温かい家族的な舞台『夏の夜の夢』は、初夏オススメの作品だ。

『夏の夜の夢』のストーリーは。
アテネの公爵(村井国夫)とアマゾンの女王(麻実れい)の結婚式を間近に控えたある夜。貴族の娘ハーミア(宮菜穂子)は許婚ディミートリアス(石母田史朗)との結婚を拒絶し、相愛のライサンダー(細見大輔)と共に妖精の住むアテネ近郊の森へと駆け落ちする。ハーミアを追いかけるディミートリアスと彼に片想いするヘレナ(小山萌子)も2人の後を追いかけ森の中へ。その森の中では妖精の王(村井・2役)と女王(麻実・2役)が可愛い小姓(小島幸士、小山颯)をとりあって喧嘩の真っ最中。そこにいたずら好きの妖精パック(チョウソンハ)が登場し、王の命令で「惚れ薬」を手に女王にいたずらを仕掛ける。そして、女王はロバの頭をした職人ボトム(吉村直)に恋してしまい・・・・。妖精と人間、男と女、日常と夢の世界をめぐり、スリリングな夜が展開される。

「では、どちらさまもおやすみなさい。ご贔屓のしるし拍手と握手をいただけるなら・・・・」妖精パックによる『夏の夜の夢』お馴染みの口上。終幕にはビックリの趣向が用意されている。
『夏の夜の夢』は新国立劇場にて14日まで。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)