2008年はお笑い界にとって小さな変化が起きた年だった。前年M-1タイトルを奪取した無名コンビ、サンドウィッチマンの台頭にショートネタの定着、キャラ芸人の淘汰、などなど。業界全体としては出オチやフレーズ芸から地に足のついたネタを重視する方向へシフトしていった。
それにより2009年、大ブレイクを果たしたのが、はんにゃ、オードリー、ナイツの3組。彼らの共通点は従来の漫才やコントに新らしい要素を盛り込んだことである。はんにゃはズグダンズンブングンゲームとヘタレキャラ、オードリーはずれ漫才、ナイツは“ヤホー”とボケ続けるスタイルで世間に受け入れられた。
長きに渡るお笑いブームで、世間はオーソドックスな笑いでは満足できなくなっている。ブレイクするためにはただおもしろいだけではだめだ。『○○? ああ、××の人たちね』というわかりやすい武器が必須である。
それを踏まえた上で考えてみるに、上記3組に続きそうな芸人は今のところ見当たらない。しいていえば「ハライチ」(ワタナベエンターテインメント)はいかがだろう。
ハライチのウリは“ノリボケ漫才”。この呼び名ではではわかりづらいが、ボケの岩井が『△△の□□』といったお題を出し、相方の澤部がツッコミを入れるスタイルである。岩井はお題を少しずつ変化させ、後半はほぼ無茶ぶり状態。これによりネタが続けば続くほどツッコミがぐだぐだとなり、その様が笑いを誘うのだ。澤部のツッコミは“関東一”と称されたさまぁ~ず・三村を髣髴とさせるものであり、その点では残念ながら上記3組ほどの鮮烈な新しさは感じられない。
ツッコミの新しさでいえば「ボーイフレンド」(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)も悪くはない。ツッコミと同時に相方の体を叩くのだが、その叩き方に変化を持たせている。時に頭、時に胸、さらには両手でパタパタと足元から頭までリズミカルに叩き上げることも。それぞれのツッコミに“昇り竜”や“避雷針”といった名前まで付けているこだわりようだ。これだけで戦いぬくには厳しいが、ベースとなるネタそのものをもっと叩き上げれば強力な武器となるであろう。
はんにゃ、オードリー、ナイツという新興勢力の登場に、図らずも若手の台頭が止まってしまったお笑い界。この状況を打破する若手は、いつ、どこに現れるのだろうか。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)