writer : techinsight

結婚式場で“くたばっちまえ”の心理

 フジテレビ系月9ドラマ「婚カツ!」の主題歌「ウェディング・ベル」。ドラマで使われているのはパフィーによるカバー版であり、オリジナルはSUGARという女性トリオが歌った1981年の大ヒット曲である。当時小学生だった私は現在までこの歌を鮮明に記憶していたが、歌詞の内容については深く考えてこなかった。

 この歌は、好意を持っている男性の結婚式に呼ばれた女性の心情を語ったものである。アラフォーと呼ばれる年齢になって改めて考えるに、なんとも酷い話だ。本当にこんなことが起こり得るのだろうか。歌詞と照らし合わせて思い浮かぶケースをいくつか挙げてみる。

ケース1.純然たるストーカー
 歌の中の女性は偶然知り合った、または顔を見知った男性に一方的に想いを募らせ、いつしか向こうも同様の感情を抱いていると思い込むにいたった。男性は女性の存在すら知らない可能性が高く、結婚式場にはこっそり入り込んでいるのであろう。だからこそ一番後ろの席に座っているのだ。この場合、“くたばっちまえ”と“アーメン”の間によろしからぬ事態が起こることも考えられる。

ケース2.悲劇のヒロインきどり
 女性と男性は旧知の間柄。遠い昔には想い合っていると取れなくもないエピソードが1つ2つあったが、お互いはっきりとした恋愛感情を認識することなく年齢を重ね、男性だけが結婚を決めてしまった。どことなく寂しい気持ちを持て余したまま招待に応じた女性であったが、幸せそうな花嫁を見て突如湧き起こる嫉妬の炎。私は彼を愛していたのかもしれない、彼の方もそうだったのかも、いいやそうに違いない。われ知らず記憶を改竄した悲劇のヒロインの誕生である。

ケース3.少女の初恋
 歌の中の女性は実は年端もいかぬ少女であり、近所に住んでいた大人の男性に淡い恋心を抱いていた。少女が精一杯の背伸びでメイクをしてみせても、彼はやさしく叱るばかり。一向に少女を女性扱いすることがないまま、彼は手ごろな女性と結婚、親しくしていた少女を両親とともに結婚式に招待した。傷心の少女の目に花嫁はただの年増にしか映らず、私の方が綺麗だと子供じみた優越感に浸っている。

 この3つのケースは、あくまで男性に非がないことが前提である。実際に交際していた女性を結婚式に呼ぶような男性など救いようがなく、“くたばっちまえ”と思われても仕方ないであろう。しかしこの歌の中では2人の交際について明確な記述はなく、女性が結婚を夢見ていた、という程度。となればこの女性の苦悩は、男性が自分を愛してくれていたという思い込みからくる逆恨みの可能性が高い。

 自覚がないとはいえ、めでたい席で恨まれるのは気分のいいものではない。1はさておき、2や3は男性の心がけ次第でいくらでも防ぐことができるはずだ。結婚を控えている男性諸君、式に知人女性を招待するのならばいま一度彼女との記憶を探ってみてほしい。心の中で“くたばっちまえ”などと毒づかれることのないように……。

(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)