(C)2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ
5月23日にオフ・シアターで公開された麻生久美子主演の映画『インスタント沼』が、大盛況を記録している。記者も連日お客さんがあふれ返っている映画館でやっと見る事ができた。麻生は、実は田舎育ちののびのびした性格の女優。本作主人公・沈丁花ハナメは、そんな麻生にぴったりの役柄だ。「おと・な・り」「ウルトラミラクルラブストーリー」と出演作が続く、麻生久美子ブームの“頂点”といっていい傑作『インスタント沼』。その映画の魅力に迫る。
「私に起こるあらゆる災難は、すべて自然の摂理。」と言いたげなメッセージの『インスタント沼』。なぜ、題名が『インスタント沼』なのかというと映画を最後まで見ないと分からない仕掛けになっている。YUKIによるさわやかな主題歌も手伝い、とにかく確実な女子ウケが細かく計算されている。が、「時効警察」の三木聡・脚本監督によるどこか男性ウケするゆるめの要素もはらんでいて、なかなかあざとい映画だ。
ジリ貧OL沈丁花ハナメが、落ち目女性誌の編集長として「見当違い」な取材を進めていく冒頭からてんやわんやと楽しいのだが、仕事に見切りをつけたハナメがある事故で危険な状態にある母(松坂慶子)の為に実の父親・ノブロウ(風間社夫)に会いにいくところからが物語の大筋。電球と名乗るノブロウは、ガスと呼ばれる電気工(加瀬亮)とあやしげな骨董店を商いしていて、ドロドロのきな粉飴みたいなモノを飲み、変な所がハナメにそっくり。しだいに電球に打ち解けたハナメは、自らも骨董店をやってみる。そして電球の骨董店にはちょいといい女の客・和歌子(相田翔子)が現れ・・・・。
しだいに沼に魅せられるハナメ。グリーンのホースが水を孕んでぷくっと膨れたり、なにしろ演出がかわいい。ごちゃごちゃした骨董屋にある品物や、主人公のハナメが毎朝パンダのカップで飲んでいるドロドロの麦芽ココア。(本人はシャバシャバミロと呼んでいる。)沼に沈んだ招き猫と同じ色をしたペットの黒いウサギ、河童を思わせる緑を基調とした色彩。目に入るもの全てが「何か楽しい夏」を予感させる。そしてそれらの真ん中にいる麻生久美子がイキイキと輝いている。
奇人だけど面白い人物・電球を演じた風間は、近年にないあたり役!小気味のいい麻生との掛け合いが絶妙だ。そのほか、様々な出演者が頃合のいい所で顔を出す。やっぱり「時効警察」同様、ふせえりがすごく面白い。そして、エンドロールも見逃せない。モデルのはなが扮した役名がズバリ「幸運を呼ぶ客」。遊び心一杯だ。
(C)2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ
ブーブー文句を言いながらもずっと一緒にいてくれて、頼りになるパンクロッカーのガスの加瀬亮。派手な見た目とは違い、ハナメと二人っきりになっても手を出す気配もなく純情である。その辺はちっともインスタントじゃない。『インスタント沼』は現在公開中。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)