writer : techinsight

【ドラマの女王】なにせ子役がスゴイ。『アイシテル 海容 』

今回の【ドラマの女王】は、とうとう息子の心の“真実”が見えてきた日本テレビ系の『アイシテル 海容 』(あいしてる かいよう )。なぜ、息子は男の子を殺害してしまったのか。母や父は罪を犯した息子とどう関わっていけばよいのか、また被害者の家族はこれからをどう生きていけばいいのか。重いテーマながらやさしくじっくりと作り上げていった秀作ドラマもいよいよクライマックス。野口さつき役の主演・稲森いずみが、いつになくいい演技で泣かせる展開だ。


「海容(かいよう)」の意味とは、“海のように広い寛容な心で、相手の過ちを許すこと。”まさに、親の愛は海のように広く深い。そしてこのドラマにおいて海容は、殺されたキヨタンの家族の心にも求められていく。

小学5年生の智也(嘉数一星)が、小学2年生の小沢清貴(佐藤詩音)の頭を地面に叩き付けて殺害に至るまでを、家庭裁判所の調査員・富田(田中美佐子)に話し始めた。

智也は、最初は年下の清貴にとてもやさしく、家のトイレを貸してあげた。しだいに清貴は、「なんでお兄ちゃんは“ただいま”って言わないの?」「どうしてキャッチボールが下手なの?」など、疑問に思った事をどんどん口にしてく。その数々の疑問は、ギクシャクしていた智也と両親の関係を浮き彫りにしていった。

少々強情ながらも皆に愛され、特に「母」に愛されているという年少の清貴。彼の無垢な心から出た言葉であっても智也の心にはそれは「鋭いガラス」のように突き刺さっていく・・・・。そして、ホームレスおばあさんの怖い体験をした場所で、シンボルのように掲げられる「母子愛」を表わす看板の絵があった。
「もう、帰る。お兄ちゃんなんかキライ!」
「僕のお母さんとお兄ちゃんのお母さんを一緒にしないで!」
清貴のこの言葉が引き金になり、智也は無我夢中で幼い清貴を手にかけてしまった。

清貴役の佐藤詩音くん、智也役の嘉数一星くんの演技がスゴイ上手い。『重力ピエロ』の岡田将生と加瀬亮の少年時代を演じた子役くんたちの演技も泣かせたが、この二人はもっと凄い。とくに詩音くんの演じるキヨタンの「可愛い小憎たらしさ」。

ドラマの中では、「キヨタンはそんな子じゃない。犯人の少年にもっとキヨタンをわかってほしい。」と、母・聖子(板谷由夏)もキヨタンの”名誉回復”に奔走中。

智也役の一星くんは犯人役ながら将来が楽しみな美少年だ。憂いを秘めた黒い瞳につい同情してしまう。あれ?こんな顔をしてボゾボソしゃべる少年、どっかで見たことある。柳楽優弥だ。映画『誰も知らない』でカンヌを受賞してしまった、現在19歳のあの“やぎら”君。

前回このコーナーで『アイシテル〜海容〜』を取り上げたとき、“母”だけの問題では無い。と強く言った記者だが、やっぱりこういう時は母がしっかりしないとどうにもならないようだ。加害者、被害者、調査員の三人の母プラス、さつきの母・敏江(藤田弓子)の娘や孫を思う気持ちがとても温かく救われる。

しかし実際、世間を騒がす凶悪犯罪を犯す犯人の心には、冷たい母親が及ぼした影響が大きく、かならずしもこのドラマのようなやさしい親子関係が成り立つとはかぎらない。現実はもっと厳しいかもしれない。

息子の事件を通して母として人間として強くなるさつきを演じる稲森が、女優として大きく成長しているのがよく分かる一本。つらい内容ではあるが見ていて心が晴れる作品だ。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)