最近この言葉を知ったという人も多いだろう。野田首相がAPEC首脳会議にて交渉への参加方針を決め、俄然注目を集める環太平洋経済連携協定(=TPP)。強い反対を押し切って強行したという印象も強いが、そもそもTPPとはどのようなもので、私たちの生活にどんな影響があるのか? 最新の意識調査の結果とともに確認しておきたい。
「TPP参加に、賛成ですか?反対ですか?」選挙、議会、政治家情報のプラットフォーム「政治山(http://seijiyama.jp/)」がAPEC首脳会議直前の8~9日に行った調査では、20代と30代で最も多く挙がった回答が「分からない」で37.0%にのぼった。次いで2番目に多い回答も「検討を続けるべき」の24.2%で、両者を合わせると6割以上の若者が立場を明確にしていないことが分かる。
ただし、「TPPの内容を知っていますか」という質問については、「参加すべき」または「参加に反対」と回答した人の7割以上が「内容を理解している」と回答しており、「TPPのことを知らない」という回答は1%ほどであった。TPPへの参加の是非について「分からない」と回答した人も、「(TPPそのものを)知らない」と回答した人は15.1%にとどまっており、20代・30代のほとんどは「聞いたことはある」もしくは「内容を理解している」ようだ。
TPPとは、アジアをはじめとする太平洋周辺の国々の間で貿易自由化を目指す経済的な枠組みで、2015年をめどに加盟国間の農作物などの関税を完全撤廃することが目標だ。これにより日本は海外への製品輸出が増え、国内総生産の引き上げが見込まれるとして、産業界からは賛成する声が挙がっている。
一方、農業などの分野では安価な輸入品が多く流入することで、国内の農家に大打撃を与えるのではないかという懸念や、外国企業や外国人労働者の受け入れに関する規制ができなくなるという指摘もある。
調査結果について「政治山」では、「若年層はTPPについて認識はあるものの、その賛否を判断するにあたっては自らの生活への影響が分からないため、経済、景気、安全面などの日本全体への影響を基準にしていると考えられる」と分析。また、「『参加すべき』と回答した理由の中には、乗り遅れてはいけないという漠然とした感覚的な意見が散見され、しっかりとした議論がなされていない、もしくは議論の内容が国民に伝わっていないと考えられる」という。
確かに、TPPに関して説明不足と感じている人は多いようだ。「国会の議論についてどう思いますか」という質問には、「参加に反対」の人の7割、「参加すべき」という人でも4割が「議論が不足していると思う」と回答している。
調査ではこのほか、「日本がTPPに参加することによって、将来あなたの仕事の機会に影響があると思いますか」という質問もされた。その結果、全体的に「分からない」という回答が大勢を占めた。「仕事の機会が減る」と回答した人達からは、「低賃金の労働力が流入すると思われる」「職の取り合いになる」といった意見が挙がった。賃金についても「国内産業が淘汰され、全体的に薄利多売になりそう」「海外に拠点が移る」など、ネガティブな回答が多く見受けられた。
調査結果をまとめると、TPP参加への賛成派は「国際社会に乗り遅れないように…」という感覚的な回答が多く、反対派は農林水産業への影響などネガティブ面の情報にやや偏って判断しているようだ。いずれにしても、政府がまずTPPについて国民に分かりやすい説明をしていく必要があり、それを受けて私たちはしっかりと根拠ある判断をしていかねばならないと言えるだろう。
尚、今回野田首相が表明したのはTPPの「交渉への参加方針」であり、直ちに日本がTPPに加盟するわけではない。藤村官房長官も14日の記者会見で、「これまで交渉に参加していなかったため、情報がそもそも不足していた」として、今後はより一層説明責任を果たしていく考えを示している。
今回調査を実施した「政治山(http://seijiyama.jp/)」は、選挙、議会、政治家情報のプラットフォームとして私たちの生活に関わる重要な情報や興味深い世論調査を実施しており、今回の調査結果の詳細も「政治山」のホームページ上で見ることができる。
■選挙、議会、政治家情報プラットフォーム「政治山」 http://seijiyama.jp/investigation/investigation_3.html
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)