writer : techinsight

市場規模減で正念場迎えるトクホは”買い”か?「敢えて申請しない」選択肢も。

飲料やヨーグルトなど、日常の様々な場面で見かける「トクホ」。「何となく体に良さそう」「国のお墨付きだから安心」ということで商品を選ぶ際の判断基準にもなるが、この「トクホ」が今、正念場を迎えているという。昨年度の市場規模が調査以来初の、しかも2割近い減少となったのだ。

トクホ=特定保健用食品とは、1991年に厚生労働省により発足した制度で、病気の予防や健康を維持する効果が期待される商品に対して表示が認められるもの。血中のコレステロールを正常に保ったり、整腸作用があるなどの食品が多く出回っており、(財)日本健康・栄養食品協会によると、2010年9月30日時点で960品目がトクホの許可を得ている。

ところが、このトクホに転機が訪れている。9月24日付けの日本経済新聞によると、トクホに対する消費者からの信頼が揺らいでいるという。

前述の、(財)日本健康・栄養食品協会が2年毎に実施している特定保健用食品の市場規模に関する調査では、2009年度の市場規模が5494億円となり、1997年度の調査開始以来初の減少に転じた。しかも、前回の2007年度と比較して2割減と、大幅に下がっていることがわかった。

これについて日経新聞記事では、価格が高い割には本当に科学的に生活習慣病の予防に役立つのかと消費者から疑問の声が出始めていること、花王の食用油「エコナ」(09年10月にトクホを失効)の発がん性物質含有問題などが市場規模の縮小に拍車をかけたと分析している。

さらに、トクホにはもう一つ問題点がある。トクホは医薬品としては認められないものの「効果」を謳った商品に対して認定されるものであるため、その許可を得るには、試験データをはじめとした膨大な量の書類提出が必要となっている。また、前出の「エコナ」問題を受けて、消費者庁が昨年11月より「健康食品の表示に関する検討会」を実施。消費者に誤解を与えないため、よりいっそうの科学的データを重視した審査・認定が必要としている。

審査が厳しくなるということは、企業にとってはその分コストが上がるということでもあり、結果的に商品の値段が高くなるということにつながる。(我々消費者のためを考えてのことだろうが、結局そのしわ寄せで我々の支出増につながってしまうのでは、本末転倒とも言えるだろう。)逆にそれゆえ、「トクホ」を敢えて申請しない企業も出ている。

今月19日、化粧品やサプリメントの開発・販売を手がける株式会社七十八パーセントが新商品「スーチサ・ゲール」を発表した。一見するとバッファロー吾郎・木村の新ネタか?と思わざるをえないネーミングだが、決してふざけた製品ではない。トクホ関与成分にもなるものを中心に30種の成分を配合した、血糖値や血圧、血中コレステロールの低下作用のあるサプリメントだ。

この商品の特長は、トクホ成分を使用していながら、敢えてトクホを申請しないことにより、販売価格の低下を実現している点だ。

販売元の株式会社七十八パーセントによると、申請に莫大な手間とコストがかかるトクホに対して、現状は「大企業にしか申請できない。」といった批判が出ているほか、大企業がマーケティングの観点から、普通の食品と同じであるのに高い費用をかけて無理やりトクホ化するケースもあるという。その分は消費者がコスト負担を強いられる結果となっているのだ。

そこで「スーチサ・ゲール」はトクホと同じ安心と効果で安価なサプリメントの提供を目指した。トクホの関与成分になっているものを中心に30種の成分を配合していながら、敢えてトクホ認証を受けないことで、販売価格を極限まで下げている。

配合成分を具体的にみると、血糖値低下作用のあるバナスリンや、血圧低下作用のあるGABA、血中コレステロール値改善作用のあるキトサンなどが配合されており、血糖値および血圧、血中コレステロールの低下を図ることが期待される。これらの効用については、各種論文や、学会発表によって公表されている。
さらに詳しく見てみると、例えばGABAは、動植物、微生物など自然界に広く分布する非たん白質性のアミノ酸の一種で、血圧低下作用が期待されている。GABAを1日あたり10mg以上と類似群であるプラセボを12週間摂取し、定期的に収縮期血圧、拡張期血圧をそれぞれ測定した試験で、収縮期血圧、拡張期血圧ともに摂取4週間後から摂取期間終了(摂取12週間後)まで継続して有意な低下が見られたという。(『健康栄養食品研究 Vol.6 No.2 2003』による)「スーチサ・ゲール」にはこのGABAが10mg配合されている。

同社の提供する健康食品ブランド「Nalelu」は健康ダイエット、ヘルスケア、ホワイトリフト化粧品など5つの商品カテゴリで開発・販売を行っており、リピート率が95%をこえるサプリメントもあるという。今回の「スーチサ・ゲール」も、そのブランドの新商品として販売される。

「スーチサ・ゲール」は約15日分・225粒が入って販売価格が税込6300円。ホームページ上での限定販売となる。

審査基準も消費者の目もともに厳しくなる今こそトクホは”買い”だと言えるが、一方で価格の上昇は避けられない。こうして「スーチサ・ゲール」のように「申請できる品質を満たしていながら、敢えて申請しない」という選択肢も、これから増えていきそうだ。

(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)