writer : techinsight

【アリ?ナシ?】マンション居住者の2人に1人が「一生住み替えたくない」。高まる日本人の永住意識。

突然だが、日本人の何%がマンションに住んでいるか、ご存じだろうか。答えは10%だ。国土交通省の推計によると約528万戸のマンションにおよそ1300万人が居住しており、大都市部を中心に毎年およそ20万戸のペースでマンションの供給が続いているという。

そんな中、興味深いデータがある。マンション居住者の2人に1人が現在の住居を終の住み家にしたいと考えており、四半世紀前と比べてその数が30ポイント近く上昇しているのだ。

国土交通省が5年に1回行っているマンション総合調査によると、最新の調査結果が公表された平成21年4月時点で、国内のマンション居住者の49.9%が「現在の住まいに永住するつもりである」と回答し、「いずれは住み替えるつもりである」の19.4%を大きく上回った。同じ調査を昭和55年度に行った際には「永住するつもり」が21.7%、「いずれは住み替えるつもり」が57.0%となっており、現在と逆転していることがわかる。

そして昨今はマンションの老朽化も話題になっている。現在国内にある築30年を超えるマンションは63万戸にのぼり、今後さらに増えることが見込まれる。一方、居住者の高齢化も同時に進んでおり、昭和55年度時点で7.9%にしか過ぎなかった60歳以上のマンション世帯主の割合は平成20年度には39.4%と急増している。マンション居住者の高齢化は、国内全体の高齢化を上回る勢いで進行していることがわかる。

老朽化したマンションはお年寄りにとって不都合なことが多い。例えば、階段の上り下りだ。昭和45年以前に建設された4、5階建てマンションのエレベーター設置率はわずか6%にとどまっている。また、耐震強度の問題や水道管等主要インフラの劣化という問題もあり、マンションの建て替えについて検討が始まった、或いは実際に建て替えが決まったという事例も多い。

しかし、前述の調査からもわかるように、現在、全国各地のマンションには「永住したい」「高齢者」が多く居住している。実際に東京23区内では、「残り少ない余生を今の環境で過ごしたい」「建て替えのために引っ越すのは負担」として、居住者の否決により老朽化が進む住宅の建て替えが進められないといった事例も発生している。

こうした状況を踏まえて、建て替えではなくリフォームやリノベーションにより既存の建物を維持しようとする動きも出ている。矢野経済研究所が今年6月に発表した「マンション管理市場に関する調査結果」によると、2008年のマンション共用部修繕工事の市場規模は前年比7.5%増の5024億円で、翌2009年も前年比14.4%増の5746億円と推計され、年々増加していることがわかる。

新築マンション市場の先細りも予測される中、大量生産や使い捨ての時代とは決別し、永住したいと考えている住民のニーズに応えることがマンション管理会社に問われている。リノベーションによるマンションの長寿化は、「もったいない」を世界に伝播させてきた長寿大国・日本の風土に合った選択と言えよう。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)