writer : techinsight

【アリ?ナシ?】都会のカラス、この10年で半減。苦情件数はピーク時の15%に激減。

「そういや最近カラスを見なくなった…」東京に住んでいる人の中に、そう感じている人は多いだろう。事実、都内全域におけるカラスの生息数はおよそ10年前と比べて半数にまで減っている。

これは東京都環境局が先月末に明らかにしたもの。都では増えすぎたカラスから生じる様々な被害を防ぐため、平成13年度に都市部を中心にカラス対策プロジェクトを発足。都営の公園など都内各地にトラップを仕掛けて成鳥を捕獲した結果、平成13年度時点では都内でおよそ3万6千羽確認できたカラスの生息数が、プロジェクト始動から5年でおよそ1万7千羽にまで減少させることに成功した。

その後、平成20年頃にかけて微増し続けたものの、平成21年度にはトラップを大幅に増加。捕獲数はおよそ4600羽と、前年度に比べ4割増加した。

さらに今年度はトラップの増加に加えて、新たにカラスの大規模なねぐらとされる36箇所で巣の撤去を行うことを明らかにした。

こうした地道な「駆除」の甲斐があってか、東京都に寄せられるカラスに関する相談件数も激減しているという。都の発表によると、ピーク時の平成13年度にはおよそ3800件 あったものが、昨年度はその2割にも満たない、約540件となっている。

都では今後もごみ対策として防鳥かごの利用を促進するなどして、さらなるカラス対策を進めていきたいとしている。

 
一方、カラスによる新たな被害として近年急増しているのが、停電だ。先月9日に東京・足立区で、およそ2700世帯が1時間にわたって停電するという事故が発生したが、その原因は巣作り中のカラスの電線への接触だとみられている。

この1ヶ月に発生した主要な事例だけを見ても、11日に山口・岩国市で2900世帯、20日に神奈川・藤沢市で2200世帯、22日に山形市で1000世帯が一時停電となった。中には道路の信号機などが全て消灯してしまい、警察官が交通整理にあたる場面もあったという。いずれのケースも大きな事故が発生しなかったのが幸いだ。

カラスは針金製ハンガーなどの金属を巣の材料にするため、こうした金属が電線に触れることでショートし、停電してしまうのだという。東京電力など各地の電力会社は、毎年カラスの繁殖期にあたる3月から5月頃にかけて、一県あたり2000個から3000個のカラスの巣を撤去しているという。

しかし、カラスの営巣はわずか一日で出来てしまうため、撤去してはまた営巣…のいたちごっこが続いているのが実情だ。

生活の大部分で電力が欠かせない現代人にとって、この事態を「カラスの勝手でしょ」と看過するわけにはいかない。しかし、元々は木など高い所へ巣を作る習慣のあるカラスが、人の住む町へ出て電柱に営巣しているということは、それだけ木や森が減っているということでもある。

各地で相次ぐ停電事故は、「電気を使いすぎるなよ」というカラスからの警鐘なのかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)