writer : techinsight

【名盤クロニクル】テクニカル・ロックの最右翼 PFM「チョコレートキングス」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ロック)

ロックミュージックにおける演奏技術を評価するのは難しい。ヘタクソなヴォーカルでも「個性がある」と言われることもあるし、信じられないほど上手でも「ヘドが出そう」と言われることもある。

しかし、変拍子を交えた鉄壁のアンサンブルを聴かせるバンドについては、おおむね賞賛される傾向がある。そうしたロックアルバムの中から、イタリアのバンドPFMの「チョコレートキングス」を紹介したい。

PFM はどちらかといえば、英国のプログレッシブロック御大「キング・クリムゾン」などに影響を受けた叙情性のある音楽を多く演奏していたバンドである。大陸ヨーロッパのロックは、しばしばその叙情性を自家薬籠中のものとしてコピーし、「コピーはオリジナルより過激になる」というセオリーにより、ロックから遠い地平にまで行ってしまうバンドも多かった。

しかし、PFMは常に変貌するバンドであった、叙情性と壮大さを誇るバンドから、次第にテクニカルアンサンブルを聴かせるようになった記念碑的作品がこのチョコレートキングスだ。

たとえば2曲目の「ハーレクイン」は、地中海風の叙情性ある導入部のあと、引っ掻き回すようなグルーブ感で疾走しながらも、余裕のある演奏を聴かせている。

4 曲目のアウト・オブ・ザ・ラウンドアバウトも、同じく中間部でドラム、アコギ、キーボードが細かいパッセージを重ねて行く様態は、筆舌に尽くし難い。

全体的に地中海的な爽やかさの中にジャズロックを思わせるタイトなアンサンブルを聴かせる内容となっており、テクニックだけをきかせるのではなく、非常に「音楽的」な作品なのだ。

「音楽的」という言葉の真意は、演奏家が楽器演奏技術に溺れずに、音楽表現という一番大事な要素を常に忘れないということである。

(収録曲)
1. フロム・アンダー
2. ハーレクイン
3. チョコレート・キングス
4. アウト・オブ・ザ・ラウンドアバウト
5. ペイパー・チャームズ
(TechinsightJapan編集部 真田 裕一)