writer : techinsight

【名盤クロニクル】パット・メセニー「ワン・クワイエット・ナイト」

(画像提供:Amazon.co.jp)

パット・メセニーは、ジャズギタリストという範疇に便宜上入っているが、最新サウンドシステムを使った先進的なサウンドから、伝統的ジャズフォーマット、そしてアコースティックギター1本のソロまで様々な音楽の実験を試みている多才なアーティストである。決してギターテクニックを誇るタイプのギタリストではなく、広範なサウンドクリエーターと呼ぶべきであろう。そのパットがバリトンギターという低音を強調したアコースティックギター1本で録音したアルバムが、この「ワン・クワイエット・ナイト」である。

これほど、優しく耳に心地よい癒しの音楽はなかなかないであろう。その秘密はバリトンギターという、通常のギターよりも1オクターブほど低い音程のギターサウンドにある。
ギターでありながら、ベースの伴奏を従えたような厚みのある音は、まるで時間が止まってしまったかのような至福のひとときを与えてくれる。

音楽全般に言えることだが、自分の演奏で聴衆を感動させよう、自分の世界を表現しようと力演すればするほど、かえって聴衆は音から逃げ腰になってしまうことがある。

音楽を聴かせるのではなく、音楽という世界が物質化してそこに存在し、目に見えるような気持ちにさせるのが、理想の演奏というべきだろう。

ここでのパットの音楽は、リスナーに安らぎを与えようと過度に意識しているのではなく、タイトル通りに「静かな夜」がそこにあるかのような感覚を味合わせてくれる。

仕事を終えて、部屋に帰ってアロマポットとキャンドルを焚いて、聴きたい。そんなステキなソロアルバムである。

(収録曲)
1. One Quiet Night
2. Song For The Boys
3. Don’t Know Why
4. Anothe Chance
5. And Time Goes On
6. My Song
7. Peace Memory
8. Ferry Across The Mersey
9. Over On 4th Street
10. I Will Find The Way
11. North To South, East To West
12. Last Train Home
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)