writer : techinsight

【名盤クロニクル】孤高のフェミニズムシンガー小林万里子「ファーストアルバム」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:J-POP)
女性シンガーは純真に恋人を想う切ない女心を歌うのが基本だった1970年代に、男社会の横暴を激しく告発した過激な歌詞で歌ったシングル「れ・い・ぷフィーリング」が放送禁止、ファーストアルバムは発売直前に封印され、芸能界永久追放という運命をたどった、孤高のフェミニズムシンガー小林万里子の唯一の復刻オフィシャルアルバムである。

全編、男への恨み辛みと、告発に満ちた珠玉の(?)楽曲集である。
実際に男性が聴いて、これほどイヤ~な気分になる音楽はほかにないだろう。ということは、つまり彼女の男性批判はかなり的を得ていて、男性にとっては見たくないものを見せられた気分になって、なんともやりきれないのである。

復刻されたこのファーストアルバムは、ライブで演奏された追加曲が多数収録されているが、歌と言うよりは即興による悪態悪罵になっている「いやな男のブルース」や、もはやここでは内容を紹介できず、タイトルのみで察していただくしかない「便所のブルース」「中絶のブルース」など、日本ポップ界における第一級のキワモノCDと言えるだろう。

ただ、必ずしもフェミニズムの啓蒙に終始しているわけではなく、自立した女の生き方と男性に依存する生き方の狭間でどうやって世間を渡っていくのが良いのか、女性達自身にも結論が出ていないのは、30年前も現在も変わっていないことがわかる面白いアルバムである。

バブル期に賞賛された「自立した女」「シングルマザー」「DINKS」などがなぜ廃れて、現在の婚活ブームにつながっているのか、改めて考えさせられる作品である。もしかしたら、小林万里子が「婚活のブルース」などという曲を作るかもしれない。

余談だが、女性が最も元気の良かった時代を代表するシンガーは渡辺美里「マイ・レボリューション」である。聴き比べてみると面白いであろう。

(収録曲)
1.まりこの{お返事はNON NON NON}
2.時には○○のようにーとか
3.せんたくブギ
4.演歌・女の情
5.自己本位の男~私は女,私には分かる~
6.Woman to Woman
7.朝起きたら…
8.便所のブルース
9.日の丸ブギ
10.中絶のブルース
11.いっぺん私も
12.いやな男のブルース
13.男といるのに〈シングル・バージョン〉
14.朝起きたら…
15.男がつかない
16.れ・い・ぷフィーリング
17.男といるのに
18.すんまへんのブルース(への4番)
19.まりこのお返事はNon non non
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)