音楽好きであれば、“ギブソン・レスポール”という名を聞いて、そのエレクトリック・ギターが現代ミュージック・シーンにどれほど寄与してきたか、すぐにお分かり頂けると思う。その生みの親で自身もギタリストであったレス・ポール氏が、13日ニューヨークで、94歳で肺炎から来る合併症のために亡くなった。
小学生の時からギターに親しんだレス・ポールは、高校在学中にRhubarb Redの名で仲間と組んでデビュー、ギタリストとして音楽界に名乗りを上げた。ラジオとライブ・ハウスの生活に高校も中退、もっぱらシカゴで活動した。
1941年、彼はソリッド・ボディのエレクトリック・ギターの原型となる“The Log” をギブソン社から発表。これが後のレオ・フェンダーによる “ブロードキャスター”につながった。
1946年にポールは自宅に録音スタジオを作り、レコード盤のカッティング・マシーンを作った他、多重録音技術まで編み出している。1948年にはオクラホマ州で交通事故に遭い、大切な商売道具である右腕とヒジを負傷したが、見事に復帰した。
1949年に3度目の結婚をしたメアリー・フォードとは、『How High the Moon』や『Mockin’ Bird Hill』他、次々とヒットを放った。1952年、ギブソン社はソリッド・ボディの “レス・ポール” を発表するが、このモデルこそが誰もが知るベスト・セラー商品である。
1962年にはギブソン社との契約も切れ、ポールのギターは人気が下火になるが、その度にエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、元『ガンズ・アンド・ローゼズ』のスラッシュといったロック・ミュージシャンらが愛用するために息を吹き返し、皮肉なようだがロック・ミュージックの全盛期を支えるギターとも言われた。
ポール自身はジャズ・トリオのギタリストとして活動する日々に入るが、彼のギターに対するミュージシャンらの信頼は厚く、2005年には現代の一流ロック・ギタリストと呼ばれる面々が勢揃いし、彼の90歳の誕生日を記念して『レスポール&フレンズ』なるアルバムを発表している。
今回の訃報にスラッシュは、「レス・ポールという人は、何にでも敏感に反応する活気に満ちていました。彼と長年一緒に仕事をしてきたたことを本当に光栄に思います。彼の才能は無類のものでした。」と述べている。
ロック界ばかりではない。ジャズ界にもこのエレキ・ギターの使用者はラリー・カールトン、ジョージ・ベンソン他ズラリ。パット・メセニーは「現代の文化にレス・ポールが与えた衝撃のすごさを、どう表現したら正しく評価できるでしょう、言葉も見つかりません。」と敬意を払う。
94歳で天国に召されたギターの神様は、レスターさん、ジーンさん、ロバートさん、コリーンさんという子供たちとその伴侶、5人の孫、そして5人のひ孫と友人に囲まれて静かに息を引き取った。“レス・ポール” は20世紀から譲られた音楽界の大切な遺産。いつまでもミュージシャンらに愛されることであろう。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)