writer : techinsight

人件費対策で一時休業等実施企業増えるも、休業手当は法定下限を上回る企業が9割

3社に1社は不況対策として労働時間関連の対策を実施…人事労務の専門情報誌『労政時報』の発行などを行う民間調査機関の労務行政研究所は、不況対策としての労働時間関連施策の実施状況について調査を行った。

昨年来の深刻な景気低迷の下で、受注減に伴う操業調整や雇用維持などのために、社員の休業など労働時間面での対策を講じている企業が多く見られる。そこで労務行政研究所ではこうした実態を明らかにすべく、5月上旬から6月末にかけて、全国証券市場の上場企業を中心とする4115社を対象に調査を実施。回答のあった273社(製造業153社・非製造業120社)の調査結果を集計した。

それによると、今年1月から4月末までの間に不況対策として何らかの労働時間関連施策を実施した企業は全体の33.7%にのぼり、ほぼ3社に1社の割合となっている。人員余剰への対処やコスト削減などの必要から、社員の休業や時間外労働の抑制など、労働時間関連の施策が多くの企業で求められていることがわかる。また、これらの企業がどのような施策を講じたのか複数回答形式で挙げてもらったところ、「一時帰休・休業」の実施率が最も多く80.4%であった。

規模別に見ると、何らかの施策を実施した企業の割合は1000人以上の大手企業が42.5%と高く、また産業別では製造業が52.3%と過半数にのぼっている。実施した施策別では、生産拠点を持つ製造業で「一時帰休・休業」の実施率が9割にのぼっている一方、非製造業は「時間外労働の削減」が50.0%で最多となっている。

調査ではこのほか、一時帰休・休業の実施対象についても複数回答形式で尋ねられた。その結果、「特定の事業所の一部社員」が47.3%と最も多くなり、これに「特定の事業所全体」が45.9%と続いている。

さらに、一時帰休・休業実施時の休業手当の支給水準についても詳細が明らかになった。操業調整など「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、使用者には当該労働者に対して平均賃金の60%以上の休業手当を支給することが労働基準法第26条などで義務づけられている。一時帰休・休業を実施した企業に対し、休業手当の水準をどの程度としたかを尋ねたところ、全体のほぼ9割にあたる89.2%が法定の下限、すなわち平均賃金の60%より高い水準で支給していることが明らかになった。規模別で見ると、300人から999人規模で「法定の下限分を支給」が19.0%となっているものの、その他の規模はいずれも「法定の下限より高水準で支給」が90%を超え、大勢を占めている。そのうち31.8%の企業は休業手当の水準を賃金の100%としていることも明らかになった。

調査結果の詳細は労務行政研究所のホームページにて公開されている。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)