“原作レイプ”という言葉をご存知だろうか。漫画や小説などを元に作られた二次作品が、原作からかけ離れた駄作であった場合に使われる侮蔑用語である。漫画のドラマ化が当たり前となった今、原作レイプを目にする機会も増えてきた。
あの作品がドラマ化!――漫画好きとしては心が踊る一瞬である。主な登場人物を実在の俳優に置き換えて、主人公は誰それがいい、ヒロインは、ライバルは、などと考えている時間は本当に楽しいものだ。キャスト発表はまさに運命の別れ道、これによりドラマを見るか見ないかが8割がた決まる。もっともテンションが上がるのは第一話の放送直前であり、終了後は……。私的最上級賛辞は『これはこれで』だ。
原作への愛が大きければ大きいほど、ドラマへの評価は厳しくなる。仮にそれが駄作であり、第一話で見る価値なしと判断したところで、放送自体は1クール続いてしまう。つまらないドラマが愛する漫画の冠をもって流され続ける不愉快な日々。ドラマがつまらないせいで原作までつまらないと思われるのが腹立たしいことこの上ない。
漫画とドラマはまったくの別物である。静止画の集まりで音も出ない漫画は、技術的にはドラマに劣るであろう。しかし漫画でしか表現できないものが確実に存在する。漫画ならではのおもしろさを、ドラマでどう表現するかが成功の鍵となるのだ。
漫画をそのままドラマにすることは不可能だし、なんの意味もない。稀に生まれる漫画原作の大ヒットドラマは、たいていが原作にはないテイストを加えているものだ。漫画家をはじめ多くの関係者が血反吐を吐く思いで作り上げた作品のおいしいところだけを頂こうとしても、そうは問屋が卸さない。どうすればよりおもしろくなるかの模索は絶対に必要である。
ドラマとして成功するためには原作に忠実である必要はない。原作通りではテレビ的に好ましくない表現をややソフトにして世界観を台無しにするくらいなら、そんな要素はばっさり切り捨ててしまえばいいのだ。高校生の喫煙がまずいからといって、代わりにキャンディをくわえさせることになんの意味があったのか。初めから喫煙する設定をなくせばよかっただけの話ではないか。たとえ原作からかけ離れていようとも、おもしろくなれば問題ない。つまらないから原作レイプだと言われるのだ。
二次作品の作り手たちよ。ドラマ化しようと思った漫画をもう一度じっくり読み、考えてみてはくれないか。本当におもしろいドラマになるのか? そのために必要な+αは? 商売である以上利権も確かに重要だが、つまらないものにお金はついてこないことなどわかりきっているではないか。
ドラマ化にあたり原作を生み出すのと同程度の煩悶を、とまではいわないが、近いものは持っていてもらいたい。お気軽な映像化による原作レイプはもうたくさんだ。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)