アフリカ発!Breaking News

writer : flynn

【アフリカ発!Breaking News】東日本大震災で被災した女性の写真が南ア雑誌に。

瓦礫と化した町に、茶髪の日本人女性が膝を抱えて泣いている。女性は裸足で、横には女性のものと思われる赤い長靴が置かれている。東日本大震災後の南アフリカの雑誌『YOU』の表紙だ。この雑誌では、その後の女性の様子が掲載されていた。

女性の絶望的な泣き顔には南アフリカの人々が胸を打たれた。この写真を撮ったカメラマンは、彼女に話しかけることも名前を聞くこともできなかった。なので、その後の彼女(雑誌ではファンキーな髪型と報じている)の行方を追いかけることも、なぜそれほどまでに打ちひしがれていたのかもわからないだろうとあきらめかけていた。

しかし、ある記者が地震の取材を兼ねて女性を捜すことを決意し、宮城県名取市内のあらゆる避難所に写真を掲載して情報提供を求めた。その写真を見て連絡してきたのは、幸運なことに本人だった。

4月21日に発売された『YOU』ではこの女性の続編が載っていた。この日本人女性はアカネさん、28歳。ホステスをしながらボーイフレンドとその母親とともに2階建ての木造家屋に住んでいた。場所は東京から320キロほど離れた人口7000人ほどの小さな漁村。アカネさんに子供はいなかったが、子供のように溺愛していた犬がなんと13頭もいた。

3月11日、アカネさんは自宅で犬たちとともにテレビを見ていた。そこへあの大地震が襲ってきた。「自宅に大きな被害はなかったが、電気、水道、ガスが止まってしまい、津波が来るという情報すら知り得なかった」が、「数年前の大地震の時も、津波が来ると言っていて来たのはほんの10センチだった」こともあり、あまり心配をしていなかったというアカネさん。ボーイフレンドが仕事に出ていたので、彼の母親とともに近くの店に電池と水を買いに車に乗り込んだ。犬たちは怖がっていたが、アカネさんはすぐ戻るから大丈夫と言って車を走らせた。

地震からおよそ1時間たったころ、巨大津波が来るから避難しろと近所の人に言われて、買い物から帰る途中だったアカネさんたちはとりあえず高台に避難した。犬たちのことが心配だったが、まさか家の2階まで津波が襲うことはないだろうと思っていたそうだ。しかし、予想は大きくはずれてアカネさんの住んでいた家は犬もろとも巨大な黒い波にのみこまれてしまった。

アカネさんは津波が襲った翌日に家に戻ろうとしたが、町は洪水状態で家に行くことすらできなかった。結局自宅のあった辺りにたどり着けたのは地震から2日後、写真が撮られたのは3月13日の午前11時ごろだろうとアカネさんはいう。ボーイフレンドが違う場所を捜している間、アカネさんは自宅があった場所で絶望の中1時間ほど立ち尽くし、座って泣いていたところを撮られたのだ。

アカネさんは避難所の掲示板だけでなく、ツイッターやフェイスブックなどで犬を捜していることを呼びかけ、自らも捜し歩いた。その後、6歳になるラブラドールが見つかった。このラブラドールは親戚を捜していたある家族によって瓦礫の中発見され、見つからなかった親戚の代わりにその犬の面倒を見ていたのだ。捜索願を見たこの家族がアカネさんに連絡、アカネさんと涙の再会となった。この犬との対面で、アカネさんは他の犬も無事かもしれないという勇気をもらったそうだ。その後、大型のプードル「モモ」とも再会した。モモは女性に発見され、食べ物を与えられた後ペットショップに連れてこられたそうだ。

現在、ペットと暮らせる避難所で2頭の犬と過ごしながら、残りの11頭を捜している。アカネさんにとって、犬は家族同様。だからあれほど絶望的な顔をしていたのだろうと述べている。ちなみに写真にあったアカネさんの横に置かれていた長靴は「親戚から借りたもの。なぜ長靴を脱いでいたのかは思い出せない。」そうだ。

日本からはるか離れたアフリカの地にも東日本大震災の惨状は伝えられている。さらにこのアカネさんの写真が多くの南アフリカの人々にその心の傷の深さを伝えることとなった。ここ南アフリカでも一日も早い日本の復興を人々が願っている。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)