結果としてスティービーに対するプライスさんの辛抱強い取り組みが大きな効果をもたらすこととなった。プライスさんはこのように話している。
「最初に会った時、スティービーは僕と関わることに全く興味を示してくれませんでした。僕は慣れてもらうためにスティービーのもとを訪れ続けました。少し慣れてくるまで数週間はかかりましたが、毎日会って数時間ハリー・ポッターの小説を読み聞かせ続けたんです。スティービーは一言一句に耳を傾けてくれていて、やがて僕との時間を楽しむようになってくれました。それから数週間後には、スティービーはすり寄ってくれるまでになって僕のそばでストーリーを聞くようになったのです。」
プライスさんは規則正しくスティービーとの読み聞かせの時間を決め、金曜日ごとにコスチュームのガウンを身に纏いハッフルパフの寮生になりきったりしながら、今でもほぼ毎日のようにスティービーとの時間を過ごしている。時間をかけたユニークな方法で少しずつ盲目のスティービーの心を解きほぐしていったプライスさんのおかげで、今やスティービーはプライスさんだけでなく他の人にも心を開くようになってきたという。SPCA広報課長のタビサ・トレロアーさんは、『The Dodo』にこのように語った。
「スティービーはとても愛情深い猫ですが、自分から人に寄っていくことのほうが好きなようです。プライスさんはスティービーのために素晴らしい務めを果たしてくれました。今ではスティービーとプライスさんの間に特別な絆が育まれているといってもいいでしょう。」
プライスさんのユニークなアプローチは、スティービーが人間に対して心を開くようになっただけでなく、盲目というハンディを背負ったスティービーへの自信を芽生えさせるきっかけにもなった。スティービーは施設内の部屋をあちこち探検したり、段差から飛び降りたりするようにもなり、餌やトイレがどこにあるかも問題なく探せるようになったそうだ。その仕草は、初めてスティービーを見た人が盲目だと気付かないほどだとタビサさんは言う。
1匹の盲目の猫との信頼関係を得るために、毎日努力を怠らなかったプライスさんは「今ではスティービーは僕に体を撫でさせてくれて、頭にもキスさせてくれるようにまでなりました。とても可愛いです。心を開いてもらうまで時間はかかりましたが、その価値はあったと思います」と話しており、近い将来、母親の許可が下りたらスティービーを引き取るつもりでいるという。それまでの間は、施設でハリー・ポッターの読み聞かせを通してふれあいの場を持ち、勇気と友情についてともに学んでいくことになるようだ。
画像は『The Dodo 2018年6月14日付「Teen Reads ‘Harry Potter’ To Blind Shelter Cat Every Day Until He Trusts Him」(Richmond SPCA)(Candace Morgan Photography)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)