海外発!Breaking News

writer : tinsight-yokote2

【海外発!Breaking News】死者の脳を食していたパプアニューギニアの部族、神経系難病の解明に大きく寄与。

パプアニューギニアのある部族では、人が亡くなると参列者がその脳みそを食するという儀式がかつて行われていた。ロンドン大学のある研究チームは、この儀式により深刻な神経性疾患を発症する人と発症しない人がいることに着目していたが、彼らのおかげでパーキンソン病、アルツハイマー型認知症の治療法の解明にもつながるような発見が続いている。

パプアニューギニアの“フォア族”において、古くから続けられていた死者を弔うためのある儀式。なんと参列者が故人の脳みそを食べるというが、これが原因で「クールー病」を発症する者がいることから60年ほど前にその儀式は終焉を迎えていた。クールー病とは手足の震え、平衡感覚の喪失により歩行が困難になり、痴呆や言語障害などを起こしてやがて死に至る神経系の病気である。

これに関し、ロンドン大学神経医学研究所およびパプアニューギニアの科学者による合同研究チームは、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、狂牛病BSE(牛海綿状脳症)といったいわゆる“プリオン病”に予防的に働いているのは、ヒトにおける自然な遺伝子変異であることを突き止めたことを発表した。

研究のヒントとなったのは、故人の脳みそを食しても全員がクールー病を発症するとは限らないという事実。2009年、ロンドン大学の研究チームはそうした3000例ほどの大半がクールー病に対する強力な遺伝的抵抗性を持つ人々であったことを知り、遺伝子改変マウスでの実験からカギとなるプリオン蛋白遺伝子のコドン129ヘテロ接合体と変異型G127Vを特定していた。

その時に話題になったのは、生存競争も激しいフォア族は“ダーウィンの原理(自然淘汰説)”の典型例であるという解釈であった。葬儀の際に親類の脳みそが振る舞われて、クールー病になるかならないかフルイにかけられる。これは病気を含む厳しい環境に対し、十分な耐性と適応能力をみせる遺伝子的に強い者だけが子孫を繁栄すれば理想という、部族における自然淘汰のようなものであったというわけだ。

フォア族のそうした儀式のおかげでクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、狂牛病BSE(牛海綿状脳症)についての研究が大きく前進したと同チーム。彼らは今、「アルツハイマー型認知症、パーキンソン病といった他の神経性疾患の治療法の開発についてもいよいよ突破口が見えて来た」と述べている。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)